W杯のゴールラッシュ なぜ生まれているのか?
グループリーグの最初のカードがすべて終了したワールドカップ・ブラジル大会は、グループの第2カードに突入、前大会の覇者、スペインの敗退が決まるなどの波乱と同時にゴール数の激増傾向が顕著になっている。16試合で記録されたゴール数は「49」に達し、前回の南アフリカ大会の「25」から、ほぼ倍増している。 32か国が出場する現行方式になって以降の16試合終了時のゴール数は、1998年のフランス大会が「37」、2002年の日韓共催大会が「46」、2006年のドイツ大会が「39」となっている。こうした数字も、ブラジル大会におけるゴールラッシュを如実に物語っている。今大会の詳細を見ると、合計で3ゴール以上が記録された試合数が南アフリカ大会の「1」から「13」へ激増しているのに対し、どちらかがノーゴールで終わった試合が「11」から「5」に、1対0の勝利もしくは1対1や0対0のドローに終わったロースコアの試合が「12」から「3」にいずれも激減している。 ■チャンピオンズリーグの影響による疲労 見る側をより興奮させるゴールラッシュの理由はどこにあるのか。元日本代表MFで、現在は解説者を務める水沼貴史氏は「出場している選手たちの疲れが抜け切っていないのではないか」と指摘する。「例えばスペインは、チャンピオンズリーグの決勝を戦ったレアル・マドリードとアトレチコ・マドリードの選手たちが、かなり疲弊していると思う。加えて、全体的に攻撃に重点を置いている、あるいは攻撃的な姿勢を貫こうとするチームが多いので、ゴールで精神的に乗ったチームはより元気になり、失点したチームは逆に落ち込んでしまうのではないだろうか」。 チャンピオンズリーグ決勝が行われたのが、ヨーロッパ時間の5月25日。リーガ・エスパニョーラを戦い抜いた両チームは延長戦を含めて120分間を戦い抜き、肉体的にも精神的にも文字通り磨り減った状態でそれぞれの代表チームに合流。休む間もなくブラジル大会への準備に入った。DFセルヒオ・ラモスやMFシャビ・アロンソ、FWジエゴ・コスタら、両チームからスペイン代表に選出されたメンバーは7人を数える。 ■欧州ビッグクラブ所属選手の故障 さらにはレアル・マドリードのエース、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドも決勝戦後に古傷の左太もも痛を再発させた。一時はワールドカップ欠場も示唆されたことと、ドイツとのグループリーグ初戦でプレーに精彩を欠いたこととは決して無関係ではないだろう。DFペペの一発退場と合わせて、ポルトガルが0対4の惨敗を喫した大きな要因となった。プレミアリーグも5月18日まで行われ、最終戦でリバプールに所属するウルグアイ代表FWルイス・スアレスが左ひざの半月板を損傷している。緊急手術を経て必死のリハビリを積んできたが、コスタリカとのグループリーグ初戦では欠場を余儀なくされた。 対するコスタリカには、ヨーロッパのいわゆるビッグクラブでプレーしている選手がいない。チーム全体が非常にフレッシュで、特に後半に入ってからの運動量でウルグアイを完全に凌駕していた。初戦に照準を絞り、万全の準備を積んできた結果が3対1の逆転勝利につながったと言っていい。