留学生を励ます故郷の味、別府市にミャンマー料理店 来日30年の夫婦が一念発起しオープン
大分県別府市内に今秋、一軒のミャンマー料理店が生まれた。軍が民主政権を倒した2021年2月のクーデター以降、市内に住むミャンマー人は増加を続ける。東京で長く暮らしてきた同国出身の夫婦が一念発起して起業し、故郷の味で元気づけている。 店名は「ミャンマープライド」。餅ケ浜町の国道10号沿いにあるビル3階で9月下旬、営業を始めた。最大都市ヤンゴン出身のレイモンアウンさん(59)と、夫のアウンカインさん(50)が営む。 メニューは「レッベッタミン(茶葉とピーナツのまぜご飯)」「チェーオーシィチェッ」(ミンチや野菜がのる麺料理)など。市内で手に入りにくい母国の食材も取り寄せて販売している。 2人は30年近く前、将来を切り開こうと来日。居酒屋や弁当店などで働きながら、家族で店を開くことを目標にしてきた。昨年、一人息子のワトンさん(22)が別府を旅行し、海や山に近い環境を気に入ったことが転機に。知り合いが立命館アジア太平洋大(市内十文字原)に通っていた縁もあり、新天地での挑戦を決心した。
別府は外国料理の店が目立つが、ミャンマー料理の店はないという。来店した別府溝部学園短期大1年のニーニールインさん(22)=ミャンマー出身=は「雨の日なんかは寂しさを感じるので、故郷の料理が恋しくなる」。一緒にテーブルを囲んだ市内山の手町の介護士ティンミョーアウンさん(27)は「懐かしい味です」と楽しんでいた。 アウンカインさんは別に仕事があり、当面はレイモンアウンさんが学生を雇って切り盛りする。客はワトンさんと同年代。異国で頑張る「同郷の子どもたち」が集い、働くこともできる場でありたいという。日本人がミャンマーを知る入り口になれればとも願う。 レイモンアウンさんは「あれが食べたい、これも食べたい、と注文が多くて大変」と笑う。「でも、おいしそうに食べてくれるのを見るのは楽しいです」 <メモ>県の統計によると、別府市内のミャンマー人はクーデター前の2020年12月末は28人だった。今年6月末は16・5倍の462人になった。市の最新データによると、10月22日時点では550人いる。そのうち8割強の在留資格が「留学」。