アングル:外資系4証券、25年の日本株に強気見通し トランプ影響は限定的
Mayu Sakoda [東京 18日 ロイター] - 外資系証券4社が2025年の日本株に強気の見通しを示している。追加関税などのトランプ次期米政権の政策やそれを受けた世界経済の不透明感が株価の重しとなり得るものの、国内の賃上げや企業業績の向上が打ち返すとの見立てだ。日本株は総じて上昇し、年末の株価はTOPIXで2900ポイントから3100ポイントと予想、3年連続のプラスリターンとなる見通し。 TOPIX予想の最小値はUBS証券の2900ポイント、最大値がゴールドマン・サックスの3100ポイントで、足元の水準(2728.20=12月17日終値)をいずれも上回っている。平均値は3000ポイントで約8%高の見通しだ。単純に日経平均に上昇率を当てはめると、史上最高値を更新し、4万3000円が視野に入る計算だ。 最も強気なゴールドマン・サックスは、過去数カ月の日本株は、極端なボラティリティや政治の不透明感、主要市場に対するドル建てアンダーパフォーマンスの3つの逆風で「投資家の熱意」は弱まっていると分析。「2025年には、これらのマイナス要因は、堅調なマクロ経済のモメンタム、政策の明確化、構造改革の継続によって、概ね相殺される」との見方を示す。 ゴールドマンは、国内政治の不透明感は高まっているが、日銀の金融政策正常化、地方創生、実質賃金の伸び、防衛費増加で主要な政策課題の見通しは改善すると予想。目標株価収益率(PER)の拡大は緩やかな想定としており、上昇の大部分は1株利益(EPS)の成長でもたらされるとみている。 <トランプリスクは限定的> トランプ氏の米大統領再選をきっかけに、株式市場ではラリーがみられたが、直近では追加関税への警戒が頭をもたげ、ボックス圏での推移となっている。 来年のリスクとみられるトランプ関税については、日本への影響は比較的小さいとの見方も示された。ゴールドマンは、全般的な追加関税を導入した場合でも「米国への輸出国の相対的な価格競争力は変化しない」点や「米国がすべての輸入品を国産品に置き換えることは困難」といった点を挙げている。同社の推計では、米GDPを1%ポイント押し下げる一方、日本のGDP押し下げは0.1%ポイントという。 モルガン・スタンレーMUFG証券は、日本企業の北米での収入は売上高全体の15.5%と指摘、このうち半分以上は現地で得ていると推計しており、法人税引き下げの恩恵を受けられるかもしれないと指摘する。一方、米中対立が激しくなった2018年の動向を踏まえると、関税の直接的な影響より企業センチメント悪化などの間接的な影響に注意が必要という。 中国で節約・貯蓄志向が高まる中、経済減速のリスクへの懸念が市場ではくすぶるが、ゴールドマンは、中国政府が経済刺激策を打ち出すとの見方から、国内の中国関連株はアウトパフォームする可能性があるとみる。「中国関連株は米国人投資家が中国株に直接投資することが難しくなった場合の代替投資先と映る」と強気スタンスを示している。 <外需より内需、賃上げ・構造改革の進展がカギ> UBSは物色対象として、外需から内需へのシフトを見込む。日銀による利上げを踏まえると、銀行など金融セクターにアップサイドの余地が残るほか、実質賃金の上昇で小売・食品などの消費セクターに強気という。自動車など外需株はトランプ関税で不確実性が高まるため慎重スタンスとしている。 モルガン・スタンレーMUFGも、追加関税によって不確実性が高まるとして、自動車、鉄鋼・非鉄金属、電気機器、精密機器などの外需株をアンダーウエートとした。一方、防衛、資本財、建設、情報通信、銀行、保険、不動産、小売などの内需セクターをオーバーウエートとしている。 余剰資本の適正化や政策保有株の解消が注目を集めてきた企業改革についてUBSは、先行企業では、事業ポートフォリオの見直しや成長投資に踏み込む事例がみられるようになってきたと指摘。事業再編で企業の収益成長力を高めるアクションが広がっていくとみており「日本株のピークROE(株主資本利益率)は9%から12%超に切り上がる余地がある」とみている。 企業業績についてJPモルガンは8%の利益成長を予想。円安効果は剥落するが、企業改革で余剰資金の活用が進み、ROEは2018年のピークを上回る可能性があるという。 JPモルガンは経済正常化前の平均付近にあるバリュエーションや、グローバル投資家の資金流入余地を踏まえて「日本株は上昇を続ける」との見方を示している。 各証券会社の2025年末見通しは以下の通り レポート日 25年末 騰落率 日経換算 ROE 25年末 名目GDP成長率 賃上げ コア 日銀金利 TOPIX ドル/円 CPI ゴールドマン・サックス 11月18日 3,100 13% 44729 N/A 159 3.3% 3%以上 2.1% 0.75% モルガン・スタンレーMUFG 12月4日 3,000 9% 43286 N/A 138 3.6% 3.4% 2.1% 0.75% UBS 12月4日 2,900 6% 41844 N/A 145 3.3% 3.0% 2.4% 1.00% JPモルガン 12月2日 3,000 9% 43000(公 9.4% 148 4.4% 3.8% 3.4% 1.00% 式) ※TOPIXの騰落率と日経平均の換算は12月17日時点の終値で算出