任天堂の株主総会で宮本茂氏が「任天堂を選んでもらう理由を作る」取り組みと仕事への情熱を語る。さらに若い層への引き継ぎを考慮しつつ「これからも新しいIPをつくることや、面白そうなことに積極的に関わっていこう」と意欲も見せる
任天堂は、6月27日(木)に開催した「第84期 定時株主総会」の質疑応答に関する要旨を公開した。公開された要旨の記載内容から、代表取締役フェローの宮本茂氏による「任天堂を選んでもらう理由を作る」取り組みや、「新しいIPをつくることや、面白そうなことに積極的に関わっていこう」とする今後への意欲が示されている。 6月27日開催の株主総会では、5月に告知されたNintendo Switchの後継機種に関する転売対策や生産体制に関する質問が出された。しかし、株主の間で話題となった質問は、米国での 「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のオープンをはじめ、ビジネス的に広がりをみせる任天堂が「今後どのような道を歩んでいくのか」との質問であった。 宮本氏は質問に対して、京都府宇治市で開業準備中の「ニンテンドーミュージアム」に触れつつ、花札やかるたを起点にさまざまなビジネスを経てエンターテイメントにたどり着いた任天堂のビジネスへの振り返りを展開。下記のようにコメントした。 代表取締役フェロー 宮本茂: 現在、京都府宇治市に当社の歴代の商品を通じて任天堂を知っていただくための施設として「ニンテンドーミュージアム」の開業を準備中です。「ニンテンドーミュージアム」の展示を見ながら任天堂の歩みを振り返ると、ちょうどひとつの節目を迎えたように感じます。 任天堂のビジネスは花札やかるたから始まり、さまざまなビジネスを展開した後に、エンターテイメントに徹することを決め、その結果、幸いなことにビデオゲームに出会いました。ビデオゲームの世界においても、任天堂は競合他社と争うのではなく、独自の道を歩んできました。 (任天堂「第84期 定時株主総会 質疑応答」(PDF,735KB)より) 一方、宮本氏の所感としては“10年ほど前”から「ゲーム専用機ビジネス」だけでは世界中にエンターテインメントを届ける上で限界があると感じており、モバイルやテーマパーク、映画など異なる取り組みで任天堂を知ってもらう機会を作ってきたという。 2024年後半には大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでオープンする「ドンキーコング・カントリー」や、2025年以降にフロリダ州・オーランドやシンガポールで新たにオープンする「スーパー・ニンテンドー・ワールド」も、宮本氏が推し進めてきた新たな取り組みのひとつだ。 今後の任天堂に関する展開を伝えるなかで、宮本氏は自身が大事だと考えることについて「結局は任天堂のどんなゲームを買ってもらうかということではなく、世界中のお客様に任天堂をどのようにして選んでもらうか」であるとコメント。「任天堂を選んでもらう理由をみんなで作ろう」と社員にも話をしていると伝えた。 結局は任天堂のどんなゲームを買ってもらうかということではなく、世界中のお客様に任天堂をどのようにして選んでもらうかが大事だと考えています。お客様に「自分の子どもに任天堂の商品を与えたい」と思っていただくだけではなく、自分も楽しみたいと思っていただくことが必要で、そんな「任天堂を選んでもらう理由をみんなで作ろう」と社員には話をし、実際に取り組んでいます。そうすることで、どんな商品も世界中の人々に選んでいただける可能性があります。 (任天堂「第84期 定時株主総会 質疑応答」(PDF,735KB)より) また、宮本氏は上記の考えと「任天堂は生活必需品や日用品を作っているわけではない」事実を前提としたうえで、新たな付加価値で興味を持ってもらい、常に大ヒット商品という“ホームラン”を狙っていくことにより、将来においても任天堂は「家族にとって必要なブランドになっていくと考えている」との考えを述べた。 一方、別の株主からは開発者の高齢化が進んでいるとして「今後のゲーム制作において若い世代への引き継ぎや移行は考えているのか」との疑問も挙がった。 疑問に対して代表取締役社長の古川俊太郎氏は「(開発者の世代交代は)順調に進んでいると思っており、まったく不安は感じていない」としたほか、宮本氏は「取締役のなかで私は最年長だが、快適に仕事をできている」と年長者の立場から感想を述べた。 そのうえで、「引き継いだ層もある程度の年齢になっているので、さらにもっと若い層に引き継げていけたらいいなと思っている」とも言及。「“つくる”ということをしていないと日々が楽しくないし、つくれなくなっていく」とする個人的な考えも示したうえで、『ピクミンブルーム』のようなモバイルアプリや映像、ゲーム開発など「世界中で受け入れてもらえるような新しいIPをつくることや、面白そうなことに積極的に関わっていこうと思っている」と仕事への姿勢を伝えた。 宮本: 取締役のなかで私は最年長ですが、快適に仕事をしています。 新しいゲームの開発については、若い世代の開発者でつくれる体制になっており、順調に引き継ぎはできていると考えています。ただ引き継いだ層もある程度の年齢になっていますので、さらにもっと若い層に引き継げていけたらいいなと思っています。 個人的には「つくる」ということをしていないと日々が楽しくないし、つくれなくなっていくので、『Pikmin Bloom』のようなモバイルアプリや、映像などの新しいメディアに関わっています。 これからもゲーム開発にしっかりと関わるケースもありますし、世界中で受け入れてもらえるような新しいIPをつくることや、面白そうなことに積極的に関わっていこうと思っています。 (任天堂「第84期 定時株主総会 質疑応答」(PDF,735KB)より) 上記のほか、任天堂は2026年4月に『スーパーマリオ』の新たなアニメ映画の公開も予定している。宮本氏は前作と同様にイルミネーション代表のクリス・メレダンドリ氏と共同プロデューサーを務めており、ブレがなく芯の通ったエンターテインメントへの姿勢のたまものを今後も我々に見せてくれそうだ。
電ファミニコゲーマー:ヨシムネ
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