持ち運べる電子レンジ「WILLCOOK」誕生秘話 “発熱する布”との出会いは偶然だった
バッグ内部の布が発熱し、バッグに入れた弁当や飲み物がアツアツに温められる――日本のベンチャー企業が開発した“持ち運べる電子レンジ”「WILLCOOK」(ウィルクック)が、年明けに米国で開かれた展示会「CES 2024」の「CES Innovation Awards」家電部門で最優秀賞を受賞し、大きな話題になりました。電熱線でもなくペルチェ素子でもなく薄っぺらい布が発熱する、というのはどういう仕組みなのか、どうやって不思議な布に巡り会ったのか、WILLCOOKを開発したWILLTEXの2名に開発秘話を聞きました。 【写真】現在、Makuakeでプロジェクトが進んでいるトートバッグ&リュック型の「WILLCOOK PACKABLE」。早割での価格は19,750円
■発熱する布と断熱材でこれまでにない製品を作った CES 2024で話題をさらったWILLCOOKは、2022年に応援購入サイトのMakuakeでプロジェクトが実施され、1100万円以上の金額を集めたプロダクト。応援購入を経て一般販売が始まり、現在はメーカー直販サイトや大手家電量販店などで購入できます。
WILLCOOKの最大の特徴が、繊維自体が発熱する布「EXFIBERS」を用いていること。見た目は編み目の粗い薄い布ですが、数ボルトの低電圧の電気を流すとすぐに発熱する特徴を持ちます。実際に触ってみても柔軟性があり、一見すると“ただの布”なのにもかかわらず、電気を流した途端に一気に熱くなるのには驚きました。
EXFIBERSは60度前後まで上昇しますが、バッグを密閉すれば内部は100度近くにまで達します。そのカギとなるのが、バッグの内部に敷き詰められた断熱材の存在。「熱はうまくためると発熱した以上のパワーを持ちます。一般には流通していない特別な綿を用い、熱をしっかり閉じ込めるよう設計しています」 それだけ高温になると、取り扱いを誤った際などに火事にならないか…と心配になりますが、WILLCOOKは何より“燃えない”という点を重視した設計にしているといいます。難燃性の素材を用いるだけでなく、何かトラブルがあった際は断線して電気が通らなくなり、熱の発生が止まるようにもしています。