ブルース・リウ「どんなときも自分を貫く」 「世界一」のピアニストが語るショパンとの“距離”
■進化したときに録音を 新譜として、日本でチャイコフスキーの「四季」が先行発売された。12カ月にわたってロシアの季節をピアノで描き出す曲で、彼の多彩な表現力が生きている。リウがコンクール優勝後にショパン中心の演奏活動をしていた時期、息抜きとしてよく弾いていた曲でもある。 「毎月の変化を楽しめる曲ですね。今は世界中をツアーで回っていますので、季節の変化をゆっくり楽しむことは難しいんです。僕が育ったカナダもロシアと同じく大きな北国で、人が少なく、秋や冬はメランコリーな気分になる土地。でもそんな時に1人で過ごす時間も好きです。本当は僕だって日本の桜と同じようにカナダの秋を楽しみたい。『故郷に帰りたい』という気持ちを込めてこの曲を選びました」 専属録音契約を結んでいる音楽レーベルのドイツ・グラモフォンとは良い関係を保ち、常にディスカッションして録音する曲を決めている。コンクールのファイナルで演奏した人気曲・ショパンのピアノ協奏曲第1番は録音していないし、提案もされなかった。 「コンクール直後に録音しても変化のない演奏になってしまうでしょう? だからもう少し経って自分が進化した時に録音を考えようと思っています」 来年6月にも来日し、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団と、難曲として知られるプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番で共演する。指揮者のラハフ・シャニも名ピアニストだ。 「彼との共演はピアニスト同士でよくわかってもらえる安心感もあるけど、間違ったらすぐにバレるので緊張しています(笑)」 とジョークを飛ばしながら、どこまでも明るいリウであった。(ライター・千葉望) ※AERA 2024年12月23日号
千葉望