給食向けに手作りずんだ 都会から”山村留学” 山梨・丹波山村の小学校
「疲れたら代わるよ?」。10日午前、山梨県丹波山村の丹波小学校。5、6年生3人と教諭5人が代わる代わるすりこ木を握り、ゆでたエダマメをすりつぶしていた。 この日は、元地域おこし協力隊の坂本裕子さん(47)を講師に招き、「ずんだパフェ」を作る調理実習が行われた。使われた具材は坂本さんの畑で児童が栽培したエダマメだ。 細かく砕いたエダマメに砂糖を混ぜて、手作りの白玉に添える。一つ一つに生クリームを絞り、2時間で全校児童13人と教諭を合わせた30人分のパフェを完成させた。 険しい山々に囲まれ、多摩川の源流・丹波川が流れる村の人口は約500人。「関東で一番小さな村」と称され、学校は小中1校ずつに19人が通う。最寄りの高校は車で45分かかるため、子どもたちは中学卒業後に村を離れる。 若年層の減少に危機感を抱いた村は1992年、自然豊かな土地で学びたい親子に移住してもらう「親子山村留学」を始めた。住居も格安で提供し、現在は12人が小中学校に「留学」している。 村では20~30年前から住民が協力し、子どもたちにマイタケ栽培や伝統芸能「ささら獅子舞」を教えるようになった。「山村ならではの体験」を求める、都会の親子のニーズと合致。開始から数年は2~4人だった「留学生」も徐々に増加した。18~21年に協力隊として赴任していた坂本さんも5年前、「留学先として選ばれる学校にしたい」と、大豆の栽培やみそ造りの講師役を買って出た。 実習後、給食の時間。学校の食堂に全員が集まり、作りたてのずんだパフェを味わった。6年生の小原柚芽さん(11)は初めて食べるずんだに「想像していた味と違ったけれどおいしい」と笑顔。坂本さんは「土を触れなかった子が畑仕事ができるようになるなど、子どもたちが変わっていく様子が面白い」と言う。子どもの数は少ないけれど、周囲の大人が成長を見守っている。
日本農業新聞