寛一郎、俳優デビューから7年で感じる変化「排他的だったのが、間口が広くなってきた」
■俳優業も「そんなにキラキラきれいなことばかりではない」
寛一郎は2017年に俳優デビューして以来、映像を中心に数々の名匠たちと作品を共にし、近年は主演として作品の中央に立つことも増えてきた。寛一郎は「いい意味でも悪い意味でも、昔から視野が広いというか、自分のことよりも相手のことを気にしてしまう性格なんです」と語ると「どちらかというとあまりいいことではないですよね。もともと主演という立場に対してハードルがすごく高いというか、気にしなくてもいいところまで気にしてしまうきらいがあるんです」と苦笑い。 そんな中で、いまは「なるべく自分のことに集中しつつ、周囲もちゃんと見ることができるような立ち振る舞いをしたい」と理想を掲げると「今回の撮影は町の人とスタッフさん、俳優さんみんなが一つになって……という雰囲気でできたのが良かった」と充実した現場だったことを明かしていた。 変わりたいもの、変わらなくていいもの、それでも変わっていく関係性――。作品にはそんな“諸行無常”が描かれる。寛一郎は「俳優を始めてから、意思の有無に限らず変わったことはたくさんあります。以前はとても排他的な人間でした」とつぶやく。 なかなか他を受け入れられない性格――。そんな自分が、俳優という仕事を通じてさまざまな人や文化に触れていくことにより、知ることの楽しみや寛容さが増していった。本作もまさに知的好奇心がくすぐられる映画であり、他者を知ることで、自身の懐も深くなる。 俳優という仕事の魅力を大いに感じるようになってきたという寛一郎。一方で「華やかばかりではない」という認識も増す。父は名優・佐藤浩市。幼少期から映像の現場には触れてきた。「どこの業界でもそうだと思いますが、外から見るのと内から見るのでは景色が違う。僕は内側も見てきたつもりでしたが、やっぱり実際にこの世界に入ると、そんなにキラキラしていてきれいなことばかりではないな」とより身を引き締めるようになったという。 それでも近年は「すごく自分が興味のあることや、知りたいと思える作品に参加できていると思う」と充実感をにじませる。「排他的」ではなくなったことで、より多くの魅力的な“機会”に恵まれるようになったようだ。「僕が間口を広げると、相手もオープンになってもらえるんだなと実感しています」。 俳優として製作陣から確かな信頼を得つつも、常に先を見つめる寛一郎。「いま情熱を注いでいることは?」という問いに「未来のために何かできることをしたい」と力強く語っていたが、まさに本作は「アイヌの文化を絶やさず未来に繋ぐ」という大きな使命を持つ作品であり、寛一郎の思いが詰まった映画となった。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美) 映画『シサム』は、9月13日より全国公開。 ※『シサム』の「ム」は小文字が正式表記