北極で「電子の雨」による「20年に一度」の珍しいオーロラを観測、地上からは初
太陽風のないまれな一日
このポーラーレインオーロラは、太陽からまっすぐ地球に向かってくる電子が直接発生させた結果であるだけでなく、28時間もの間、太陽風がほとんど吹かなかったまれな事例でもある。 太陽風はコロナから太陽系に絶え間なく流れ出ているため、太陽風がほとんど吹かないのは非常に珍しいことだ。細川氏は、宇宙からのみ観測された2004年のポーラーレインオーロラを引き合いに出し、「20年に一度」の経験だと言う。 太陽風がほとんど吹かなかったおかげで、細川氏が観測したポーラーレインオーロラは非常に明るく、地上からも見やすかった。地上と宇宙からの二重観測は、ポーラーレインオーロラの詳細と大規模なパターンの両方を理解するために不可欠だ。 ポーラーレインオーロラを引き起こす電子の雨は太陽から地球に直接届くため、発生源となった太陽表面の構造を映し出す影のようなものだ。細川氏らは、このデータを用いて、地球に到達した電子と、その電子が発生した場所の太陽大気との関係を理解することを目指している。 「今回の研究で本当に面白いのは、されるべき基礎的な発見がまだあることが示された点です」と、米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の天体物理学者で、今回の論文の共著者であるラリー・パクストン氏は言う。 「私たちは今、衛星と地上の観測からなるシステムにより、太陽と地球の新たなつながりを初めて見ることができるのです」
文=Isabel Swafford/訳=杉元拓斗