クックパッドが悪いのか、ハチミツ離乳食レシピ問題が投げた教訓とは
ユーザー投稿サイトの健全性を生み出すのは、ユーザーの声
では、こうしたインターネット上の情報が不安定さを抱えている中で、私たちがその情報を資産として活用していくためには、何が必要なのでしょうか。そこで考えたいのが、インターネット上に生み出されるコミュニティによる自浄作用です。 例えば、世界最大の辞典サイトとして多くのユーザーが利用しているウィキペディア。これも、情報の執筆・編集に参加しているのは世界中の個人ユーザーであり、いわば世界最大のUGCということができます。 ただ、ウィキペディアではユーザーが執筆する情報には出典(情報の参照元)を求められ、出典元の記載がない情報や信ぴょう性に疑いがある情報、個人の感情的な意見が掲載された際には、他のユーザーから疑義や議論が提案され、それは閲覧するユーザーにもわかるように表示されます。「これは本当に正しいのか」という声がサイトの中で生み出される仕組みによって、情報の信頼性を高めようとしているのです。
UGCがユーザーの知恵の集合体であるのならば、それを閲覧するユーザーの知恵によってその信頼性がチェックされるべきであり、「これは本当に正しいのか」「この情報は危うくないのか」と思ったときにはすぐに手を挙げて指摘することが、UGCの健全な運営に繋がるのではないでしょうか。UGCを運営する企業には、こうした指摘をしやすくできる環境を整備する必要があると言えるでしょう。 多くのメディアが批判しているクックパッドのハチミツ離乳食レシピが、今回のニュースをきっかけに批判されるまで掲載され続いていたのは、クックパッドのチェック体制が甘かったことが原因の本質ではありません。本当の問題は、こうしたリスクの高いレシピに対して「これはおかしい」「このレシピはあぶない」とユーザーが簡単に指摘できる機能がクックパッドに備わっていなかったことではないでしょうか。 もし、離乳食にハチミツを使ってはいけないということを知っているユーザーがレシピに対して危険性を指摘できれば、そこでコミュニティの自浄作用が働くことになり、こうした訴えに対して運営者が適切な対処をすることができれば、今回のような批判が生まれる前に問題は解決できるはずなのです。こうして情報の信頼性をコミュニティと運営者が協力し合って高めていくことが、UGCが生み出す本当の集合知が目指すところだと言えるのではないでしょうか。 (執筆:井口裕右/オフィスライトフォーワン)