「光る君へ」あのシーンに萌え死んだ! 史実と虚構の重ね合わせにワクワク ドラマをより楽しむために読むべき本とは?
推しが演じるあの役は、原作ではどんなふうに描かれてる? ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回は今年の大河ドラマ「光る君へ」をより楽しむための、紫式部&平安宮中の小説を紹介するよ! 【本の一覧を見る】大河ドラマ「光る君へ」をもっと楽しむために読むべき紫式部&平安宮中の小説
■吉高由里子・主演! 「光る君へ」(NHK・2024)
と書いたものの、初回に吉高さんは登場せず。メインキャストである藤原道長ともども子役での登場となった。が。いやもう最近のNHK、大河も朝ドラも「よくこんな大人役に似た子役を見つけてくるもんだな」と感心するんだけど、今回は特に、藤原道長の子ども時代である三郎を演じた木村皐誠さんですよ。この子絶対将来柄本佑さんになるわと確信したね。そして小生意気な諸貞親王を演じた伊藤駿太さん! 背後に本郷奏多さんが透けて見えたぞ。 さて内容。実は今回、近年の大河の中でも気楽に第1回を迎えたわけよ。だって平安宮中大河なら政治の駆け引きが中心で、戦国や幕末と違って人を殺したり殺されたりがないから気楽に見られるじゃん? ……はい、そんな私を背後からぶん殴ってくる事件が初回から起きましたね。まひろ(このドラマでの紫式部の幼名)の母親が三郎の次兄・道兼に惨殺されるという……しかも「むしゃくしゃしてやった。反省はしていない」みたいな殺し方……。 まひろの父は三郎や道兼の父である藤原兼家の引きで仕事が貰えたため、泣き寝入りを決める。その一方、まひろは初恋と言ってもいいレベルで三郎と親しくなっており、もうさ、このあとに待ち構える「愛した人の兄が母の仇!」という、昭和の大映ドラマのような、松村雄基と伊藤かずえが絶対出てくるような(わかる人だけわかってください)どろっどろの将来が浮かぶってもんじゃありませんか。まひろ、源氏物語なんか書いてる場合じゃないぞ。あとどうでもいいけど、まひろの弟を演じるのが高杉真宙(まひろ)さんってややこしくないか。 源氏物語なんか書いてる場合じゃないと言ったが、実は初回には源氏物語オマージュがしっかり入っていた。まひろが三郎と出会うきっかけになったのが、飼っていた小鳥が逃げたこと。源氏物語最大のヒロインである紫の上は、まだ幼い頃、逃げた雀の子を追いかけていたときに光源氏と出会うのである(第5帖「若紫」)。偶然出会った三郎に「いかがした」と問われたまひろが「小鳥が逃げてしまったの。大切に飼っていた小鳥が」と答えた場面、「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠のうちに籠めたりつるものを」を思い出して萌え死んだ源氏物語好きはきっと多かったはずだ。 ということはですよ、この後成長したまひろが源氏物語の「若紫」のくだりを書くときには、意識的にか無意識にかはわからないが、自分の体験を反映させたということになる。イコール、光源氏を道長に、自分を紫の上に仮託したことになる──のかな? リアルと虚構をこんなふうに重ねていくのかとワクワクしてきたぞ!