倉重篤郎のニュース最前線 「カリスマトレーダー清原達郎が指南 アベノミクス後の『超投資術』」
◇我々はいかに金融リテラシーを高めるか? 伝説的投資家・清原達郎氏の新刊『わが投資術』(講談社)がベストセラーとなっている。現代資本主義と会社の実態を見極めての投資術を万人に明かすこの書を、凡百のマネー本と次元を異にする画期的提言と見た倉重篤郎が、清原氏に訊き、金利復活時代の「われらの資産運用」を再考する――。 アベノミクス後の日本経済はどうなるのか 植田和男総裁率いる日銀がこの10年続けてきた異次元金融緩和政策を転換、マイナス金利解除、長短金利操作の撤廃、ETF(上場投資信託)購入終了を決めた。果たしてこれが金利がつく真っ当な資本主義経済を復活させる契機になるのか、それとも正常化への真の出口はまだ先なのか。リフレ派の一部からは、拙速な政策変更という声もあるが、あまりに遅すぎた転換、というのが私見である。 この間どれだけ経済がいびつになったのか。事実上の財政ファイナンス(日銀の国債直接引き受け)の結果、日銀の国債保有額は600兆円を超え(24年3月)、国債残高は1068兆円(23年12月末)、GDP(国内総生産)比2・6倍に達した。金利が1%上昇しただけで日銀保有国債の評価損が40兆円、国債利払い費は8・7兆円(33年度)増える、という身動き取れぬ「雪隠(せっちん)詰め」の状態だ。麻薬のような金融政策は、日本経済の構造転換を遅滞させ、イノベーション力を貶(おとし)め、国際競争力を弱めた。経済全体の歪(ゆが)みを正し、負の副産物と向き合うには相当な犠牲と混乱が伴うであろう。 ただ、こぼれたミルクは器には戻らない。我々は与えられたものの中で生を営み、人生設計を立てていくしかない。ゼロ金利から恐る恐る金利を引き上げていく経済社会の中で、中央銀行や国家がそれぞれ破綻を回避してくれることを切望しつつ、産業経済に資本主義の魂がまた宿り始めるかを横目で見ながら、賢く、健全に、楽しく経済活動を営んでいくしかない。だが、我々個々の知恵には限界がある。せめて賢者の指南がほしいところである。