【解説】日銀“現状維持”で円下落 “物価上昇率に大きな影響なし”? 「円安」によるデメリットとは 日本経済に警鐘も…
経済部・日銀担当キャップ 渡邊翔記者 「どうしてこんな事態になったのかというと、日本の大企業がどんどん『海外で稼ぐ』構造が定着してしまったからです。 自動車メーカーが、たとえばコストを下げるために生産拠点を海外に移したりする動きが続いてきました。それから、人口が減少するなか、日本の市場がもう大きくならないので、また海外の事業を強化していこうという企業も多いです。 たとえば、コンビニ大手のセブン&アイ・ホールディングスで見てみると、国内コンビニ事業の売上高は9000億円なのに対し、海外コンビニ事業の売上高は8.5兆円もあるんです。セブン&アイは海外での事業を強化していく方針を示しているので、海外で得た利益は、また海外で使われていく、ということになります」
鈴江キャスター 「企業の成長、生き残りをかけてという意味では、海外に出て行くこととは自然な流れかもしれないですが、一方で、円安のメリットがなかなか国内に還元されていない状況ともいえる、ということなんですね?」 経済部・日銀担当キャップ 渡邊翔記者 「そのとおりです。さらに、実はおととい(24日)、経産省の有識者会議が発表した将来の見通しというのがあるのですが、国内に投資が回らず、技術革新が遅れる状況が続いた場合、2040年ごろには日本が『新興国に追いつかれて、海外より豊かでなくなる』、『世界と勝負できなくなるおそれがある』とまで警鐘を鳴らしているんです。 さらに専門家からは、生産や投資が海外でばかりになってしまうということは、国として重要な『人材』の育成も、国内で細ってしまっていることだ、という危機感も出ています。 海外の利益を、日本国内の産業を強化するための投資や、技術革新のための投資に振り向けないと、「円安」のデメリットばかり目立って、国の力も落ちる一方となってしまうかもしれない、ということで、政府・日銀、そして企業も、あらためて、こうした危機感をもって、いまの「円安」に対応するべきなのかもしれません」