胸に達した濁水、溺れそうな子牛を何往復も夜通し引いた…「とにかく夢中。恐怖を通り越していた」 与論大雨、島は災害ごみがあふれた
9日未明から明け方にかけて猛烈な雨が降った鹿児島県与論町では、7日の降り始めから11日午前6時までの雨量が666ミリに上った。雨が落ち着いた10、11日、住民は浸水被害の片付けに追われた。泥水をかぶった家具や商品棚を水で洗い、使えなくなった家財を廃棄する作業が終日続いた。 【写真】〈関連〉リサイクルセンターに持ち込まれた災害ごみ=11日午前、与論町立長
町総務企画課によると、被害は床上浸水20棟、床下浸水9棟。人的被害はなかった。島を一周する県道が崩土で一時通行止めになった。町道など32カ所が一時冠水した。同町立長の町道伊波石仁線はのり面が崩れて通行止めになっている。 被害が大きかったのは、同町中心部、茶花の「銀座通り」。9日未明に1メートルを超す深さの水があふれ、通りを挟んだ両側の店舗が浸水した。10、11日とも商店主らが店内に残った泥水をかき出し、車で何度もごみを運び出した。水に漬かった民家や牛舎でも片付けや洗浄、消毒作業が続いた。 同町茶花で畜産を営む林年充さん(78)は猛烈な雨の中、低地の牛舎から牛を避難させた。午前1時ごろ、すでに道は冠水していたが、親牛13頭を1頭ずつ引っ張って県道脇のガードレールにつないだ。 その間に水位はみるみる上がり、高い場所にいた子牛も溺れそうになり始めた。水は胸まで上がり思うように歩けない。子牛を引いて道の上まで何往復もし、救出を終えたのは午前5時だった。
林さんは「とにかく夢中で、恐怖を通り越していた。終わった瞬間、急に寒くなって体が震えた」。牛を移動させている間に自宅は浸水してしまっていたという。 同町立長のリサイクルセンターには、11日午前までに軽トラック60~70台分、計17トンの災害ごみが搬入された。仮置き場が埋まり、最終処分場にも仮置きしているが、町環境課は「片付けは終わっておらず、運び込まれていないごみもたくさんある。まだまだ増えるだろう」と見込む。 和泊町でも10日、1日で130ミリの雨が降り、床下浸水8棟の被害があった。
南日本新聞 | 鹿児島