過酷ノルマに追い詰められる“生保レディ”の壮絶体験「50人くらいの知り合いを失いました」
<(生保レディは)性別というフィルターを外して、人間として見てもらえないのが不愉快だ。屈辱的でもある。 「看護婦」が「看護師」に、「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」に、性別による呼称の呪縛が解かれつつあるのに、いまだに「生保レディ」と呼ばれる私たち。>(一部抜粋、()内は編集部追加) 今までつまびらかに語られてこなかった、「生保レディ」に焦点を当てたノンフィクション作『気がつけば生保レディで地獄みた。』(古書みつけ・刊)。作者の忍足みかん氏に話を聞くと、出るわ出るわ、業界の闇っぷりが――。
契約件数だけでなく採用にもノルマ
――ご著書の冒頭が、駅に飛び込んで死のうとしたシーンです。衝撃を受けました。 忍足みかん(以下、忍足):ノルマに苦しめられすぎて、短絡的に「仕事に行かない方法はコレだ!」と思い込んでしまったんです。視野が狭すぎて、麻痺している精神状態でした。自分が加入している保険は自殺では下りないとわかり、「今、何してたんだろう?」と、踏みとどまりましたけど。本来なら転職活動をするとか、誰かに相談すればよかったのかもしれませんけど、転職は就業3年未満だと難しいという説を盲目的に信じていて。当時は相談できる人もいなくてあんなことをしようとしてしまいました。 勤続20年、30年ぐらいのベテラン勢は、ノルマに対して疑問すら持たず、鈍麻しているのかもしれません。私にとって彼女たちは、一周回って『世にも奇妙な物語』的なホラーでしたけど。「頑張ります!」と言いながら、目が死んでいて笑っていないんですよ。 ――ノルマは契約件数だけではなく、採用ノルマも課せられていましたよね。 忍足:どちらもキツかったです。採用ノルマはハローワークなどの前に立って、勧誘していました。オフィスでチーム分けされるから、私が達成できないと連帯責任を取らされるんです。 例えば私が1人、入社させたとします。入社当月に私は1万3000円もらえて、入社本人が3ヶ月働いたらまた私が3000円もらえます。人身売買のようですが、毎月3000円プラス、3ヶ月ごとに5000円がもらえる仕組みでした。お金以外にも、遊園地や旅行券をもらえるとか。実際は、表面化していないだけで違法らしいです。保険会社のほぼすべてが取り入れているんですけど契約が取れないから、採用ノルマを狙っている人もいました。