「奨学金を借りてくれないか…」晩婚→47歳で「父親」になり17年。年金受給目前の64歳元会社員が、大学進学を目指す我が子に頭を下げた切実な事情【FPの助言】
子どもにかかる大学費用はどれくらい?奨学金制度を利用する選択肢も
大学にかかる教育費は、国公立か私立か、理系か文系か、自宅からの通学か下宿かなどによって大きく差が出ます。 生命保険文化センターの資料(※)によれば、国公立大学で自宅通学の場合の4年間の教育費は約480万円。下宿の場合は約810万円となります。また私立文系の場合では自宅通学は約670万円、下宿となれば約980万円も必要となります。さらには、私立の医歯系の学部となると、6年間大学に在籍し、通学で約2,500万円、下宿では約3,000万円もの教育費がかかります。 もちろん、これは平均であり実際にかかる金額はまちまちです。とはいえ、数百万円単位という高額の費用がかかることには変わりはありません。 これを聞いて佐々木さんの顔色はますます曇っていきました。 「私の息子は文系の私学への進学を希望しています。自宅から通学予定ですが、それでも600万円以上もの費用をどう払っていけばいいのか…。いや、大学費用は高いということは、ある程度わかっていたんです。それでも、目の前のことでいっぱいいっぱいで、なんとかなるだろうと現実を直視していませんでした。お恥ずかしい話ですが、貯金も300万円しかないんです」 すると、FPは1つの選択肢として奨学金制度を利用する方法があることを伝え、以下の内容を説明しました。 経済的な理由で進学を諦めることのないよう、高校生にはさまざまな奨学金制度が用意されています。一番メジャーなのが、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。返済不要の「給付型」、将来返済が必要な「貸与型」の2種類あり、貸与型には無利子で借りる第一種奨学金、有利子で借りる第二種奨学金があります。 給付型、貸与型(無利子・有利子とも)に、学生の学力基準や世帯の収入基準が設けられています。貸与型の返還は、貸与終了の翌月から7ヵ月目の月からスタートします。
佐々木さんがしておくべきだったこと、これからすべきこと
佐々木さんのご家庭の場合、どのように大学の教育費と老後の備えをしておくべきだったのでしょうか。 (1)高齢で子を持つ場合「短期間での資産形成」が必須→対策をしていなかった 前述のとおり、佐々木さんが47歳の時に子どもが生まれました。となると、夫婦両輪という意味では佐々木さんが60歳で定年退職するまでの13年間という短期間での資産形成がマストであり、教育費と老後資金の準備を同時に進めなければなりませんでした。 それにも関わらず、佐々木さんは「結婚=マイホームを持つもの」という固定観念があったため、結婚してまもなく自宅マンションを購入。その時に頭金で貯金をかなり使いました。佐々木さんが80歳になるまで月約7万円の住宅ローン返済をしていかなければなりません。そのうえ、マイカーも所有しています。 妻の仕事復帰は長男を出産して1年後の予定でしたが、保育園がなかなか決まらず復職に3年もかかってしまいました。佐々木さんの両親は高齢であること、妻の両親も遠方に住んでいたため互いの親に頼ることもできませんでした。そのため、妻は子どもが中学生になるまでは時短勤務をせざるを得ず、収入アップもできずじまいでした。 根本的な問題として、佐々木さんは現役時代にそれなりに高収入を維持していたことで、逆に「お金に困ることはない」と過信していました。妻には必要と言われる金額を渡し、自分も使いたいだけ使っていました。夫婦でお金のことをきちんと話し合うこともなく、なんとなく生活をしてきた結果、貯蓄は300万円しかできなかったのです。 (2)児童手当は使わずに大学資金に充てる→いつの間にか使っていた 児童手当は、子ども一人当たり3歳未満は月1万5,000円、3歳以上から小学校修学前は月1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学卒業までは月1万円が支給されます。さらに2024年10月以降は高校卒業まで月1万円支給されることが決まっています。 児童手当はトータルで約200万円貯めることができます。 長男の大学1年目の学費は入学金等も含めると約200万円必要であり、使わず貯めておけば、大学1年分の教育費は児童手当で賄うことができたのです。しかし、佐々木さんに確認すると児童手当はいつのまにか使ってしまったそうです。 (3)できるだけ長く働く→これからできる対策の1つ 佐々木さんは現在無職ですが、働いて月10万円の収入を得れば、長男が大学在学中の年間収支のマイナスを回避することができることがライフプランのシミュレーションから分かりました(下記参照)。仮に、70歳まで働いたとすると、長男大学卒業時の貯蓄額は約400万円になります。幸いにも佐々木さんは健康には自信があるとのこと。元気で働けるうちは、家計破綻しないためにも働くことを考えるべきでしょう。 ■佐々木さんのライフプランのシミュレーション 【長男大学4年間の世帯収入】 世帯収入合計:2,748万円(手取り合計:2,300万円) (内訳) 佐々木さん収入:480万円 妻収入:1,200万円 佐々木さん年金:1,068万円 ---------------------------------------- 【貯蓄額】 300万円 ---------------------------------------- 【長男大学4年間の世帯支出】 支出合計:2,174万円 (内訳) 生活費:768万円 教育費:650万円 住宅ローン:340万円 保険料:48万円 車輛費:88万円 その他支出:280万円 ---------------------------------------- 【4年間の収支】 約400万円のプラス 長男卒業後、年間の家計収支は車の買替時期を除けば黒字となり家計破綻を回避することができます。
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