義母に「味噌汁の左右が違う」と怒られた...和食の配膳マナーによる嫁vs姑バトルを回避するテク
■なぜ関西では「みそ汁は左奥」なのか 和食の配膳は、自分から見て左手前にご飯のお茶碗を、右手前におみそ汁の汁椀を置くのが基本的なマナーと言われています。この配膳マナーは「左上右下」の考えにも由来しています。 「左上右下」とは、左側は右側よりも上位に位置するという、日本で伝統的に受け入れられてきた価値観です。 神様へのお供えや年貢として納められるなど、お米は昔から日本において神聖で貴重なものと見なされてきました。したがって、お茶碗を左に置き、汁椀を右に置くのは、お米への敬意の表れだと言えます。 一方、関西にはお茶碗の位置は左手前のままで、汁椀を左奥に置き、右手前に主菜を並べるご家庭が多くあるようです。 このような配膳をする理由は、主菜を手前に置いて見栄えをよくしたい、右手前におみそ汁があるとこぼしやすいから、など諸説あります。 しかし、これでは関西の配膳マナーは、ご飯茶碗を汁椀よりも左側、つまり優位なほうに配置するという「左上右下」の考えに反していることになります。それでは関西の配膳マナーは間違っているのかというと、決してそんなことはありません。 マナーの地域差に遭遇したときには正解不正解で評価するのではなく、自分とは異なる習慣を尊重することが大切です。 たとえば、みそ汁を左奥に置く関西出身の義両親に対して「その配膳、間違っていますから!」と真っ向から反論するのは決して賢いとは言えません。 また、その他の場面でも「その考えは古いです」や「いまの子育てはこうなんです」など反論することも同様です。 義実家のマナーに異論を唱えることが、ひいては義両親の子育てや人生そのものを否定しているととられ、事が大きくなりかねません。
■義実家のマナーに異論を唱えてはいけない 義両親と配膳の考え方で対立しそうになったときは、「関西ではこうなんですね、じゃあそうします!」と言って、たとえ場当たり的であったとしても、相手のマナーに従うのが賢明です。 では、相手のやり方を押し付けられたり、あたかも自分の振る舞いが間違っているかのように指摘されたりした場合はどうすればよいでしょうか。 私は、次の流れで対処することをオススメします。 まずは、相手の言い分を頭から拒否せず、「そうなんですね」といったん受け入れます。 そのうえで、「私は○○という話を聞いたことがあったので、汁椀を右手前に置いていました」と、自分がそうしている理由を共有してください。 ここから、「マナーっていろいろな説があって興味深いですね」というように、楽しい話題につなげていければ、思わぬコミュニケーションが生まれ、会話が弾むかもしれません。 最後は、相手の流儀を受け入れたいという素直さや考えの柔軟さを表して、「今日は○○さんのマナーでいきましょう!」と明るく振る舞えるといいですね。 どれだけ相手が押し付けがましくて、我慢の限界だと感じても、このような言動ができることが品格でしょう。 一方で、相手から流儀やマナーを執拗に押し付けられて、どうしても受け流せない、耐えきれないといったときは、どうすればよいでしょうか。 そのような場合はしっかりと見切りをつけ、そっと距離を置くことも自分の軸を大切にできる方法でしょう。 柔軟さやしなやかさは大切ですが、あなたがこれまでの人生で大切にしてきたマナーや志を変える必要はありません。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 諏内 えみ(すない・えみ) 「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)』など。 ----------
「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 諏内 えみ 構成=奥地維也