日本ブランド初の「市街地ADAS」搭載したトヨタbZ3Xが予感させるEVの着地点
プレミアムEVの装備を410万円以下の量販車で実現してしまった
NOAの搭載が急激に進んでいるが、残念ながらこれを搭載している日本ブランド車は1台もなかった。ましてや市街地までカバーするNOAは上述のとおり中国でもまだ一部車種にしか搭載されていない。 bZ3Xは高速道路から市街地までカバーするNOAを搭載しながら、20万元(およそ410万円)以下の量販価格帯で実現してしまった。これがきっかけとなって、中国EV開発競争のさらに激化することは間違いない。現地のライバルたちもこぞって追随せざるを得なくなる。 ちなみにメルセデス・ベンツもMomentaに出資しており、次期CLA(2025年5月より生産開始予定)には、中国仕様車にMomentaのNOAを搭載する可能性が高いようだ。
SDV化の進展とともにメーカーに求められる新たな課題
この最新のNOAをぜひとも日本でも体験してみたいのだが、残念ながらbZ3Xは中国専売車である。市街地ADASを始め自動運転関連技術は国や地域によって法規制や解釈がまちまちで、その恩恵をすべての人が享受できる段階にはまだない。 たとえば、テスラFSDの最新版は最近日本で頒布開始されたが、残念ながら利用できる機能は米本国に比べまだ限定的だ。ゆくゆくは、日本国内版のNOAが登場するはずだが、それはまだしばらく先のことになるだろう。 また欧米では情報漏洩など、中国テック企業に対して安全保障上のリスクを懸念する声もある。一方で中国政府も輸入EVによるデータ流出を警戒しており、輸入車の通信機能に制限をかけている。EVは性能競争の時代から、SDV化に伴うソフトウェアを競い合う時代に移行しつつあるが、そこに新たな障壁が生まれつつある。 各国で仕様を共通化してコスト低減に邁進できれば良いのだが、自動運転が普及しSDV化が進めば進むほど、自動車メーカーは国/地域に特化した技術対応を迫られるようになるというのは皮肉ではある。トヨタがbZ3Xを中国専売としているのは、こうした背景とも無関係ではないだろうし、当然、グローバル展開する他の自動車メーカーにもその対応が求められている。自動車業界は、今後も波乱含みとなりそうな気配だ。