山崎賢人のマイルール「頭は常にクールで」 経験が結実した安倍晴明役
特に目を引くのが、手印をサッと繰り出す山崎の“手”の美しさ。「呪術を唱える際に手印を結ぶので、指が柔らかく動くように曲げたり伸ばしたり、指のストレッチを常にしていました。それによって指使いや可動域がかなり変わるんです。ただ、最初はかたくて指を大きく開くことも難しかったので、鍼も打ってもらいました」と、長い指で鮮やかに手印を披露する。 外見・肉体的アプローチの一方で、トラウマや悲しみを秘めた晴明の複雑な内面にどうアプローチしたのか。若き日の晴明は、呪術の天才と言われながら陰陽師に興味を示さない変わり者でもあった。山崎は「晴明は、真実だけを見ようとしている人。まだ(両親の死を巡るトラウマを)乗り越えてない状態である、という柱を自分の中で一本持って臨みました」と振り返る。
いわばツンデレな晴明が唯一、“デレ”の部分を微かに覗かせるのが、染谷将太演じる天皇の孫である源博雅とのやりとりだ。「といっても、この段階での晴明には人生を楽しむような余裕はないので、博雅をからかうシーンにしても、心底楽しんでいるわけではなくて。感情もあまり表さないけれど、性格が悪く見え過ぎないようには気を付けました。例えば相手を“バカ”と言うにしても、晴明からすると悪口ではなく、単に事実を述べているだけというか(笑)。そんなところが面白いと思いながら演じていましたが、博雅とのやりとりはどこか可愛げのあるものになるよう強く意識して、温度のある人間として演じたつもりです」 晴明と博雅としての、染谷との一連のやりとりは、「本当にキャッチボールみたいで、染谷くんに引き出してもらった部分もたくさんありました」と刺激的だった様子がうかがえる。「染谷くんとは(ドラマ)『時効警察はじめました』(2019)以来だし、ここまでガッツリ組んだのは初めて。ずっと尊敬してきたし、どんな風にアプローチするのかな、どうやって演じるのかなと気になっていたので、すごく面白かったです。染谷くんでも緊張するのか、とか少しだけ意外な一面を知れたのも含めて、全てが面白い経験でした」