【心理カウンセラー・中元日芽香(元乃木坂46)】推し活と卒業。喪失感との付き合い方とは?
中元日芽香さんは乃木坂46の元メンバーであり、現在は心理カウンセラー。この連載では、“推される側”を経験し、“推す側”のメンタルにも寄り添ってきた彼女ならではの視点で、推し活とメンタルヘルスの関係について語ります。今回のテーマは「推し活と卒業」。喪失感との付き合い方、別れを経ての推しとファンのいい関係性とは? 中元さん自身のアイドル卒業時の思い出も振り返ります。 【写真】元乃木坂46・中元日芽香さんインタビューショット
推し活と卒業
「卒業」――アイドルがグループを離れることをはじめとして、推し活界隈でよく使われる言葉になりました。推しの活動形式が変わることで、今まで通りの推し活ができなくなってしまう。訪れるお別れに、さみしさを感じる人もいるでしょう。 春は卒業シーズンといわれるように、小学校の6年間など決まった区切りがあって卒業するものですが、アイドルの場合、私自身もそうでしたが自分で卒業を決める人が多いのです。“推される側”にとっての卒業は、どちらかといえば会社員が転職や退職を決めることに似ているかもしれません。 今いる場所に居続けてもいいけれど、別れて新たな道を進むことを選ぶ。転職や退職の理由が「やりたいことが変わった」「成長したいと思う」「給与や環境面で満足していない」など人によってさまざまなところも一緒です。 いずれにしても続けることもできる中で卒業を決めることは、ひとつ勇気がいること。そんな実感を持っている人は、アイドルに限らずたくさんいるのではないでしょうか。
乃木坂46からの卒業を振り返ってみると
私は、2017年に乃木坂46を卒業しました。“ひめたん”という愛称をいただいて、ファンの皆さんを第一に発信を続けてきました。でも卒業すればファンの皆さんの望んでいる “ひめたん”ではなくなるのだろうな。表立って発信することは少なくなっても、人として好きでいてくれたらうれしいな。そんなふうに思ったことを覚えています。 ずっとアイドルでいてほしいというファンの皆さんにとっては、ショックな発表だったかもしれません。けれど、当時の私には「これからの自分の人生は、自分で責任をとっていかなきゃいけない」という決意がありました。みんなから快く送り出していただきたかったのはもちろんですが、もし「卒業なんて嫌だよ」という声があったとしても、「私が決めたことだから、これからの人生頑張るよ」という思いが強かったです。次にやりたいことを見つけられた、ということも大きかったかもしれません。 だからこそ、卒業を発表してからその日を迎えるまでの数カ月間は「今までありがとう」という気持ちをファンの皆さんに残さず伝えていこうと考えていました。最後のライブ出演では「仕事が忙しいけれど、最後だと思ったからチケット買ったよ」と言ってくださる方や「何年も会っていなかったけれど、最後にありがとうって伝えたいから」と駆けつけてくれた方が数多くいらっしゃいました。さみしいという気持ちを、あたたかい感謝に変えて伝えてもらえたことは、ずっと忘れられません。 ちなみに、“推される側”として逆に「ファンの方々が自分を卒業する」ようなさみしさを感じることもありました! だんだんイベントで顔を見なくなり、フェイドアウトする方も多いのですが、別のグループやメンバーに推し変します! と、律儀にご挨拶に来てくださる方も(笑)。アイドル側だって、「さみしい」と感じつつ「今までありがとう」と伝えて、次の推し活を応援します。素敵なアイドル、芸能人がいっぱいいらっしゃる中で、自分を推し続けてくれることは本当に貴重で、推され続けることも難しいことなんだ、と実感する経験でもありました。