『近畿地方のある場所について』の背筋氏が語る『サイレントヒル 2』“あとに残ったあの喪失感は今でも忘れることができません。”
オリジナル版から23年を経て、PS5をはじめとする最新鋭のゲーム表現で蘇る、ホラーゲームの名作『サイレントヒル 2』。本作は生存を脅かす恐怖ではなく、心理や人間性の暗闇を描き出す、どこか怪談のごときサイコロジカルホラー作品として、現在のホラーゲームに多大なる影響を与えてきただけでなく、あらゆるホラーに関わるクリエイターにも深く愛されている作品でもあります。 【記事の画像(6枚)を見る】 本特集では、週刊ファミ通2024年10月17日号(10月3日発売)の『サイレントヒル 2』発売記念特集のために寄せられた、ホラー小説やモキュメンタリーホラー、ARG(代替現実ゲーム)、そしてホラーゲームの実況配信など多方面のホラージャンルで活躍する魅惑的な作家・クリエイター陣から『サイレントヒル 2』への寄稿文をご紹介していきます。 背筋氏が語る『サイレントヒル 2』 2023年に「カクヨム」に投稿された『近畿地方のある場所について』でデビュー。フィクションとドキュメンタリーが交錯するモキュメンタリー的な手法を使い、現実と虚構の境界を曖昧にしながら、不気味な世界を描く。とくに、人間心理の闇や怪異に焦点を当て、日常の中に潜む恐怖を巧みに表現している。SNSで話題となり、2024年には『穢れた聖地巡礼について』、『口に関するアンケート』を出版。 最新作『穢れた聖地巡礼について』は、フリー編集者の小林が、心霊スポット突撃系YouTuber「チャンイケ」のファンブック企画を通じて、心霊スポットの調査に巻き込まれる物語が展開する。発売日 9月3日/価格 1430円(税込)/発売元 KADOKAWA ――『サイレントヒル 2』リメイク版の映像(プレイステーション5で撮影)をご覧になっていかがでしたか? 鳥肌が立ちました。それが、あの恐怖体験をもう一度味わうことへの身震いなのか、それともずっと待っていた最高の作品をもう一度楽しめることへの感動なのかは自分でもわかっていません。 ――背筋さんは、ホラーゲームはどのようなところが魅力だと思われますか? 「間(ま)」をプレイヤーが感じられるところだと思います。奥になにかが待ち構えているであろう暗い廊下を歩くとき、それが映画であれば、登場人物のペースで強制的に時間が進んでいきます。一方でゲームの場合は、ためらいながら進もうが、走って進もうがプレイヤー次第です。引き返すことすらできます。そうして自身の選択で作り出された「間」は物語を自分事化させてくれます。そこから得られる恐怖は他の媒体では体験できないものだと考えています。 ――ちなみに、ホラーゲームをプレイしていてとくに怖いと感じる瞬間はどこでしょうか。 前の回答に通じますが、「なにもないところ」を歩いているときです。この曲がり角を曲がると、なにかがいるかもしれない。いや、なにもいないかもしれない。 そんな思いを抱えながらコントローラーを握っているときが一番怖く感じます。思い返せば私が好きなホラーゲームは全て、なにもないところの設計が作りこまれているように感じます。 ――『サイレントヒル 2』の映像でどんな部分に惹かれますか? 映像を見てグラフィックス表現が何段階も進化していることはわかりました。操作性が今の時代にあわせて主人公の肩越しからの視点に変わっていることも。 ですが、それ以上に原作にはなかった映像がいくつかあることに心が躍りました。どういった追加要素があるのか、それがシナリオにどう影響するのか。今から楽しみでなりません。 ――独特なアートや映像表現、音についてはいかがでしょうか。 「サイレントヒル」シリーズをプレイしていて常々思うのは、恐怖という枠組みのなかで別のものを表現しているということです。いずれの作品も根底には「哀しみ」が横たわっているような気がしています。だからこそ、そこから生まれる映像表現や音楽が、いわゆるお化け屋敷的なものとは一線を画しているのだと考えています。 ――独特な部分といえば、ホラー作品におけるクリーチャー表現と、その存在についても本作は唯一無二です。『サイレントヒル 2』の怪物の表現について好きなものはありますか? 一見すると意味がわからないのに、奥底に意味が感じられるような表現に惹かれます。ただおどろおどろしい化物を作るのであれば、身体の一部を損壊させたり、そこから血を流せば事足ります。ですが、サイレントヒルに登場するクリーチャーは細部まで意図を感じます。どうしてこういう造形なのか、どうしてこんな動きをしているのか、どうして主人公を襲ってくるのか……。意味を込めて作り出された愛すべきキャラクターたちには、視覚的な恐怖以上の怖さを感じます。そして、哀しさすらも。真に魅力的なクリーチャーは、そういうものだと思います。三角頭が時代を越えて愛されていることがその証左なのではないでしょうか。 ――本作は表と裏の世界が描かれますが、ホラー作品を作る上で、現実を描く際と、非現実を描く際にはそれぞれどのようなことを重視されているのでしょうか。 『サイレントヒル 2』がそうであるように、現実と非現実はどこまでも曖昧で、だからこそ怖くて魅力的なのだと思います。私自身、ふとした拍子に隣の世界とつながってしまうような、そんな表現を志向しています。地の底にある鬼が跋扈する地獄ではなく、日常生活を送っている部屋のトイレからつながってしまうような地獄。ペンキで真っ赤に塗られた便座のなかに、黒い液体が溜まっているような地獄です。 ――オリジナル版の『サイレントヒル 2』について忘れられない思い出がありますか? ホラーゲームで泣いたのははじめてでした。クリアしたあとに残ったあの喪失感は今でも忘れることができません。「あの廊下」での会話は、私が作品をつくるうえでの大きな指針になっているような気がします。 ――最後に、背筋さんは、なにか現実に怖い体験などをされたことは……!? 私自身、心霊体験をしたことはありません。ただ、怖い話を聞くのが大好きです。友人や知人に聞いて回るなかで、一度耳にしたのは「幽霊のせいにしている話」でした。詳細は書きませんが、現実的に十分解釈が可能な話をあえて幽霊の仕業にすることで、体験者がそのできごとに対して無理矢理折り合いをつけているように聞こえる話です。 それを聞いたとき、単なる怪談を聞いたとき以上の「歪み」を感じました。同時に、そうでもしないとやっていけない人間の哀しみに触れたような気もしました。 『サイレントヒル 2』でも、現実と非現実を描き分ける際の表現は、精緻に表現されたサイレントヒルの街の日常風景が際立たせています。 とくに、プレイステーション5でのプレイでは、たとえばあなたがドアを開け閉めしたり、クリーチャーを武器で殴打するなどといった際のアクションに応じて、手元のワイヤレスコントローラーのDualSenseによる振動機能で、本当にドアノブを握ったような、もしくは敵を叩く際のリアルな衝撃の伝達さえ感じるかのごとき感触が伝わります。 さらに、3Dオーディオ機能による立体的かつリアルなサウンドは、まるでいまあなたが本当にサイレントヒルの街を歩いていて、まさに“そこにいる“かのような臨場感をもたらすでしょう(3Dオーディオ機能はテレビのスピーカー、もしくはアナログ/USBヘッドホンで利用が可能です)。 かつてプレイステーション2で発売されたオリジナル版『サイレントヒル 2』の体験が、23年を経て“触感”さえもが一体となったホラー表現として、現代最新のプレイステーション5だからこそ実現できる体験として帰ってきます。 あの霧の街でお会いしましょう。 デラックスエディション限定の予約特典をお忘れなく 『サイレントヒル 2』の発売日は10月8日(火)ですが、本作のデラックスエディションを事前に予約しておくと、48時間の先行アクセス権が得られます。 さらに、プレイステーション5版デラックスエディションのみの限定予約特典として、“ロビー・ザ・ラビットのマスク”も入手可能です。ロビー君といえば、シリーズのマスコット的存在でもある『サイレントヒル3』に登場した返り血を浴びた遊園地のウサギの着ぐるみ。これはぜひ手に入れておきたい逸品なので、以下の公式サイトの情報をチェックしつつ、期限内のPlayStation Storeでの予約をお忘れなく。 デラックスエディションを10月7日中に予約すると入手できるもの ゲーム本編 デジタルアートブック デジタルサウンドトラック ピラミッドヘッドのマスク (ピザボックス) ミラのマスク ロビー・ザ・ラビットのマスク ※PlayStation5 限定 ※デジタルアートブックとデジタルサウンドトラックについては、ボーナス用のアプリケーションコンテンツとなります。 デジタルサウンドトラックはアプリケーションでのみ再生が可能です。 ※MP3などの任意の音声形式で楽曲をダウンロードすることはできません。 ※マスクについては、主人公ジェイムスがゲーム上で使用できるスキンアイテムとなります。 ※予約特典はダウンロード版(PlayStation StoreおよびSteamでの購入)のみに適用されます。 ※以下のリンクからの購入できるパッケージ版では、上記の予約特典は入手できません