ビジネスホテルの建設が相次ぐTSMC熊本工場周辺（熊本県大津町で）

　国土交通省が発表した2024年の基準地価で、九州・沖縄は全用途平均が33年ぶりに2％を超えた。台湾積体電路製造（TSMC）の熊本進出に伴って半導体関連やホテル用地などの取引が広がりを見せているほか、中心部で大規模な再開発が続いている福岡市に需要が集中し、全体を押し上げている。 【写真】大規模な再開発が続いている福岡市・天神地区（読売機から）＝富永健太郎撮影

部屋数「倍増」見通し

　TSMC熊本工場がある熊本県菊陽町に隣接する同県大津町で7月、ビジネスホテルの起工式が行われた。大分市に本社を置くABタウンが熊本県に初めて設けるホテルで、9階建ての全約180室は全てシングルを予定している。狙いはTSMC関連の出張で訪れる技術者らで、26年の開業を計画している。

　ABタウンは一帯で同様のホテルをあと2棟建てる方針で、阿部清治社長は「今後の2棟の地価は1か所目の数倍に膨らむが、TSMC第2工場の建設も決まっており、利益が期待できる」と話す。

　周辺では現在、複数の大手ホテルチェーンなどもビジネスホテルの建設を進めている。大津町によると、町内のホテルの部屋数は3月末時点で974室だったが、新設が相次ぐことで26年頃には倍増する見通しだ。

住宅地・商業地・工業地の上昇率上位5地点

　同町は今回、商業地で2地点の上昇率がともに全国トップの33・3％となったほか、工業地1地点の上昇率も33・3％で最も高かった。国内企業に加えて台湾の企業や投資家の関心も高く、台湾大手銀行グループの東京スター銀行は「飲食やクリニックなど、熊本で台湾人向けのビジネスを検討している現地企業は多い」（森本聖一・熊本オフィス所長）とする。

　TSMCの進出効果は、徐々に熊本県外でも見られ始めている。ソニーグループや京セラが半導体関連の新工場を設ける長崎県では、高速道路のインターチェンジに近い工業団地で需要が増加。福岡県内でも「全域でTSMCがじわじわと影響を及ぼしている」（不動産鑑定士）という。

県庁所在地では「福岡1強」

　一方、都市の勢いが地価に表れたのが、都道府県庁所在地別の住宅地と商業地で上昇率が全国トップだった福岡市だ。九州の各県庁所在地とは上昇率で2倍以上の差があり、「福岡1強」の状態だ。「天神ビッグバン」などの再開発が追い風となり、住宅需要も伸びていることが要因だ。