『ガンダム00』真面目な顔して「俺がガンダムだ!」←笑わせに来てるの? TV版を総括
「俺がガンダムだ!」「抱きしめたいな! ガンダム!」…強烈なセリフの数々
続くセカンドシーズンはそれから5年後、地球連邦が悪の先兵「アロウズ」を結成し、逆らう勢力を弾圧する悪夢のような世界からの始まりです。その背後にはヴェーダを乗っ取り、イオリアの計画を歪めた「イノベイド(人造人間)」である「リボンズ・アルマーク」の野心があったのでした。 リボンズは以前から、ファーストシーズンのラスボスとなった「アレハンドロ・コーナー」のかたわらで意味深に微笑んでいました。演じるのは新人の蒼月昇さんで、なぜか「アムロ・レイ」の中の人こと古谷徹さんとソックリな声であり、絶対、何かを企んでいると思われていました。 アロウズは「擬似太陽炉」を備えた強力なモビルスーツを大量に持ち、修理したガンダムエクシアでは歯が立ちません。が、新生CBが「ダブルオーガンダム」とともに駆け付け、次世代のガンダム4機が今度はアロウズの圧政へと立ち向かいます。 セカンドシーズンは、「対話」に重きが置かれています。前シーズンでガンダムが奮戦したものの、一般人だった「沙慈(さじ)・クロスロード」と「ルイス・ハレヴィ」のカップルは不幸に見舞われた上に引き裂かれ、刹那の「武力による平和」とヒロインである「マリナ・イスマイール」の「対話による平和」がすれ違いを繰り返したのですから、当然の展開でしょう。 そこでダブルオーガンダムの持つ「ツインドライヴ」に大きな見せ場が与えられます。大量のGN粒子を発生させ、それにより(テレパシーを媒介する)「脳量子波」も伝えやすくなる空間、つまり「人が分かりあえる」空間を作り出してしまえるのです。そこには、ガンダムマイスターの刹那を真の新人類「イノベイター」へと進化させるという役割もありました。 とても真面目なテーマを追及している一方で、いきなり強烈なセリフが飛び出すのも本作の特徴です。刹那が「俺がガンダムだ!」と叫んだときも、同じガンダムマイスターである「ロックオン・ストラトス」は「何言ってんだ?」と突っ込みを入れていました。 刹那にとってガンダムは、戦争を終わらせる存在です。「俺は、ガンダムになれない」というセリフも重い意味が込められていましたが、吹き出すことは不可避でした。 より困惑を呼ぶキャラクターが、ライバルである「グラハム・エーカー」です。「抱きしめたいな! ガンダム!」「この気持ち、まさしく愛だ!(ガンダムを前にして)」は正気とは思えませんし、大けがを負った後は仮面をかぶって「ミスターブシドー」と名乗り、滝に打たれて修業をしたあげく、刹那に敗れたときは切腹しようとしていました。 またファーストシーズン、セカンドシーズンとも、ラスボスがネタに走っている印象があります。かたや「金色のジム」、かたや「ガンダム」や「ガンキャノン」的に変形できるMSであり、長年のガンダムファンであれば腹を抱えて大笑いしたでしょう。 大真面目なのかふざけているのか分からない、その境界線こそが『ガンダム00』の魅力です。この面白さは、TVシリーズの先を描く『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』でもさく裂するのでした。
多根清史