「冷血!」「人でなし!」「副大統領候補の目はないな」…トランプ側近に大ブーイングが起きた“意外なワケ”
犬ばっか!
ノームがそれを書いたのは、「政治的指導者には時につらい決断をする意志が求められる」という文脈だった。でも、子犬殺しが政治的決断? 彼女は2012年の選挙のことを調べておくべきだった。現職のオバマ大統領に挑戦したミット・ロムニー候補(共和党)は、州をまたいだ移動の際、飼い犬を入れた箱を自動車の屋根に固定して長距離ドライブをした経験を語ったので、「犬の虐待だ!」と支持率が急落した。それがアメリカなのだ。 特にアメリカの右翼は、乱射事件で何人死のうと銃を規制せず、少女がレイプされても中絶を許さず、トランプがレイプで民事裁判で負けようが、セックスしたポルノ女優への口止め料を選挙資金として計上しようが、暴徒に議会を襲撃させて警官が死のうが平気なのに、犬を殺すと大騒ぎ。 ところでノームはヤギも殺している。ノームのヤギが臭く攻撃的になっていたのは去勢してないオスが発情期だった可能性が高い。しかもノームはヤギの頭をショットガンで撃ったが一発で死なせることができず、苦しませてしまったと書いている。ヤギのオスは頭突きをするので頭蓋骨が固いから散弾では貫通できない。ノームは牧場育ちを自慢してるのにそれも知らなかったのか。でも、誰もヤギには同情しない。そう、ノームは馬も射殺してるのに、そっちも人は騒がない。犬ばっか。同じ動物なのに不公平だよ! (まちやまともひろ 1962年生まれ。映画評論家。米カリフォルニア州バークレー在住。BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN」が不定期放送中。当連載2022年夏からの1年分をまとめた単行本『ゾンビ化するアメリカ』(小社刊)が発売中!) 「脳が寄生虫に食い荒らされている」ロバート・ケネディ次男の“数奇な運命”〈トランプが要職に起用〉 へ続く
町山 智浩/週刊文春 2024年5月23日号