「コンセントに挿すだけ」家庭の送電網を利用し高音質データをスピーカーに送る新技術
送電網を利用する「電力線ブロードバンド」を使っている人なら誰でも知っているとおり、コンセントを使用して家庭内のどこへでもデジタルデータの転送を可能にするシステムは、帯域幅や距離が制限される無線ネットワークに頼らずに、離れた場所にある機器にデータを送るための驚くほど便利な方法だ。 しかし残念ながら、家庭内の電力線を利用してデータを送信する際に一般的に発生する「デジタルノイズ」が、この転送方法で本当のマルチチャンネルのオーディオ配信を実現させることを今まで妨げてきた。だが、米国カリフォルニア州に本拠を置く通信技術企業のFasetto(ファセット)社が発表した「AUDIO Cu」システムが、これを変えた。 AUDIO Cuは、本当に「プラグを挿すだけ」で、家庭の電力線を利用して「Dolby Digital(ドルビーデジタル)」「Dolby TrueHD(ドルビートゥルーHD)」「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」などの規格の音声を、音質を損なわずに、離れた場所に設置された機器に伝送するホームオーディオシステムを実現できる。 AUDIO Cuの優れている点は、掃除機やエアコン、洗濯機のような電力消費の多い家電製品が原因で電力線に発生するノイズを検知して対処できることだ。実際に前述の3つの音声フォーマットのすべてにおいてDolby(ドルビー)から認証を取得している。 このシステムを使えば、自宅のあちこちに置かれた音響機器を、何十メートルものケーブルを引き回したり、従来のWi-FiやWiSAおよびWiSA E、Bluetoothといった無線規格に付き物の煩雑さや音質制限に我慢することなく、接続することが可能だ。AUDIO Cuでは、電力線を通る音声が、構造的な問題や無線周波数干渉による悪影響を受けることはない。 驚くべきことに、AUDIO Cuシステムは複数のブレーカーや端子、ジャンクションボックスを経由しても、ドルビーのマルチチャンネルサウンドをスピーカーやサブウーハーに伝送できる。ブランドを問わず有線スピーカーと互換性があるため、スピーカーの数を自由に増やしたり、スピーカーシステム全体を簡単に別の場所に移動させることもできる。このシステムは要するに、本物のフルサラウンドのスピーカーシステムで聴ける音質と、サウンドバーのワイヤレスで接続できる利便性を、併せ持つというわけだ。