グーグル幹部が「人々はAIについて聞きたくない」と語る理由
スマートフォン関連では、変化の多い1年だった。2023年には生成AIが主流となり、2024年にはスマートフォンメーカーがこれをより積極的に新製品に搭載し始めた。サムスンの「Galaxy S24」、Googleの「Pixel 9」、Appleの「iPhone 16」の各シリーズにそのことが表れている。 2024年に入ってGoogleの「Android」プラットフォーム担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーに就任したSeang Chau氏に、スマートフォンに生成AIを搭載して1年で得た学びについて尋ねると、少々意外な答えが返ってきた。それは、「人々はAIについて聞きたくない」というものだ。2023年のGoogle I/Oの基調講演で同社が「AI」という言葉を140回以上口にしていたことを考えると、予想外の反応だ。 「AIにワクワクする人も、少し怖さを感じる人もいる」とChau氏は言う。「例えば『かこって検索』をAIとは呼ばない。つまり、AIをツールとして、あるいはAIとは何かについて語るのではなく、本当に重要なのは人々をどのように支援するかということだ」 AIに何ができるかが重要であり、Chau氏にはその点で考えがある。生成AIは2024年、電子メールの要約など単純でニッチなタスクを人々に代わって担い始めており、最終的にはさまざまなことができるようになるだろう。Chau氏は、Qualcommの幹部など業界の他の人々と同様に、次の段階として「agentive」(エージェンティブ)AI、つまり複数のアプリで何度もタップやスワイプをすることなく、スマートフォン上でタスクを実行できるAIを予見している。 スマートフォンの出荷台数が2023年にほぼ10年ぶりの低水準になり、人々はより長くスマートフォンを使い続けるようになっているため、スマートフォンの技術革新はピークに達したのではないかという疑問が近年持ち上がっている。人々を再びスマートフォンに熱狂させられるかどうかは、大部分AIの進歩にかかっている。 真に役立つユースケースがなければ、AIはあまり意味を持たない。それを変えられるのは、Chau氏のような人々だ。 折りたためる画面や洗練されたカメラ、しゃれたハードウェアとは異なり、AIの利点はそれほどすぐに感じられるものではない。 スマートフォンに搭載されたAIについて、消費者はまだ関心を持っていないことを示すデータがある。米CNETがYouGovと共同で実施した調査では、スマートフォン所有者の4分の1が、AI機能を有用だと感じていないことが分かった。画像作成、写真編集、テキストの要約や執筆にAIを使っていると答えたのはわずか10%だ。 Chau氏によると、AIが複数のアプリにまたがってより上手く機能し、ユーザーの作業を支援するエージェントとして進化すれば、状況は変わる可能性がある。複数アプリにまたがる一般的な作業を自動化することはすでに可能だが、生成AIベースのエージェントはさらに、アプリの表面的な機能を超えた動作を実行する。Googleのバーチャルアシスタント「Gemini」を他のアプリと連携させる拡張機能は、その方向性に沿ったものだとChau氏は言う。 生成AIに信頼して作業を任せられるようになるのは、まだ先の話だ。生成AI技術は改善されているものの、AIチャットボットはまだ誤った情報を生成することがあり、これにすべてのタスクを任せることは考えづらい。特にGoogleは、2024年に入って「AIによる概要」が「ピザに接着剤を加える」ことを推奨したことや、「イマジネーション」機能で不適切な画像を作成できることが判明したことで批判された。 「ツールは昔から悪用されてきたため、私たちは素早く対応しなければならない」と、AIの悪用について同社が学んだことを尋ねられたChau氏は答えた。「私たちは、ユーザーが何を期待しているかを聞き、迅速に対応する必要がある」 それでも、Chau氏との会話や、QualcommのSnapdragon Summitでのプレゼンテーション、「Apple Intelligence」の初期機能のリリースなど、業界全体の動向を踏まえると、2025年にAIがスマートフォンにもたらす変化がより明確になっていくことは明らかだ。それがスマートフォンの買い替えにつながるほどの魅力になるかは不明だが、Chau氏はそうなると確信している。 「これは、デバイスとの関わり方を確実に変えるものだ」と同氏は言う。「突然、『すべて自分でやらなければ』から『スマートフォンが私を理解し、作業を手伝ってくれる』という状況に変わる機会だ」 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。