【毎日書評】小さくても危ない「善良な働き者」ではない「筋金入りのBADな外来アリ」の恐ろしさ
無冠の帝王「アルゼンチンアリ」
アルゼンチンアリは学名をLinepithemahumileという。(中略)humileは「とるにたらない」という意味で、要は「しょぼいアリ」というかわいそうな名前がついたアリである。 原産地はアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジルを含む南米で、現地にはハキリアリなどのように形態的にも生態的にもハデな特徴をもつアリが多くいるので、たしかにアルゼンチンアリにはぱっと目を引くような特徴はない。 具体的には、体長約2.5ミリメートル、体はやや細長くて茶色、毒針や目立ったトゲなどはなし。(21ページより) 特徴に欠けるからこそ、分類学者は「しょぼいアリ」と命名したのかもしれません。しかし、なめたらいけないと著者はいいます。南米の原産地ではメジャーな種のひとつとして普通に多く見られ、侵入地ではさらに爆発的な増殖力を示し、非常に活発に活動するため、踊るべき侵略者になっているというのです。 約170年前の1850年ごろから原産地の外に広がったアルゼンチンアリは、1900年までにはヨーロッパ大陸、アメリカ大陸、アフリカ大陸、1940年ごろにはオーストラリア大陸に上陸。最後に残ったアジア大陸は、1993年に日本、2019年に韓国に侵入し、五大陸に生息を拡大したそう。 ちなみに派手な刺咬被害はないものの世界中でもっとも分布を拡大しており、温帯域の経済国を席巻しているのもアルゼンチンアリ。また日本の気候風土にもっともあい、今後広範囲で君臨する可能性も。そんな理由から、本書ではアルゼンチンアリを「無冠の帝王」と表現しているのです。(20ページより) 先にも触れたように、生活圏内に侵食しつつある外来アリを、私たちは無視できない状況にあるようです。だからこそ本書を通じ、さまざまな知識を蓄えておくべきなのではないでしょうか。 >>Kindle Unlimitedの3カ月無料キャンペーン【10/20まで】 Source: 文春新書
印南敦史