19センバツ星稜 第3部・チームの支え/1 選手第一、裏方に全力 /石川
<第91回選抜高校野球> ◇指名の決め手は「人間性」 浜塚光希マネジャー(2年) いたずらっぽい表情で、控えめなエースを前へ前へと押し出す姿が印象的だった。第91回選抜高校野球大会(23日開幕、毎日新聞社、日本高野連主催)の出場校が発表された1月25日。気勢を上げる星稜の選手に報道陣のカメラが向けられると、浜塚光希マネジャー(2年)は隣にいた奥川恭伸投手(同)とじゃれ合い、大会注目右腕から満面の笑みを引き出した。 「マネジャーの候補を何人か考えた中で、誰とでも分け隔てなく話しに行けるコミュニケーション能力がある。そこが一番だった」と林和成監督(43)。出場校決定の瞬間は、図らずもその言葉を象徴する場面になった。 選手の立場からいったん離れることを意味するマネジャー打診は、指揮官を毎年悩ませる仕事でもある。最後の決め手は、人間性。新チームが発足する昨年8月の終わりごろ、山瀬慎之助捕手(2年)が主将になるのとほぼ同時期に浜塚さんのマネジャー転身が決まった。 「最初は少し抵抗があった」と、浜塚さんは明かす。珠洲市立緑丘中では二塁の正選手。「より高いレベルの学校でプレーした方が技術も向上すると思った」。九回に8点差を逆転して甲子園行きを決めた2014年石川大会決勝を中学1年で目の当たりにしたのも決め手になった。ただ、奥川投手をはじめ、中学時代に全国優勝を経験した仲間たちの壁は厚く、1年生大会での代走出場のみで公式戦出場はかなわないまま。「選手をサポートするのも大事なこと」と、自らの役割を受け入れることにした。 秋以降は、前任のマネジャーで今春卒業した小布施承太郎さんを無料通信アプリLINE(ライン)で質問攻めにする日々。「要望に応えるために、選手第一で行動してほしい」。先輩の言葉を胸に、来客対応などの傍らで自主練習の相手も買って出る。カップをお湯で温めてからコーヒーをいれる作法は、林監督から教わった。周囲を見渡す観察眼を養いながら、練習場を駆け回る。 記録員としてベンチ入りするセンバツ。「気持ちの高ぶりはある。近くで選手を見られるのはうれしい」と浜塚さんは言い切る。19人目の戦力としての矜持(きょうじ)が確かにあった。【岩壁峻】 ◇ センバツ開幕まで約3週間。星稜の選手を支える人たちを紹介する。(題字は星稜OB・真弓将さん)