アメリカンマッスルまでEV化かよ……でもじつはローパワーFFなんて世代もあった「ダッジ・チャージャー」の歴史を振り返る
新型チャージャーは2ドアと4ドアにEVもラインアップ
「ついにマッスルカーもEVの時代か……」。 アメリカ車ファンはもちろん、おそらく世界中のクルマ好きがそう感じたにちがいない。2024年3月5日、ステランティス傘下のダッジは新型チャージャーの市販モデルを発表した。約14年ぶりのフルモデルチェンジを受け登場する新型チャージャーは、ダッジ・ブランドとして初となるフルEV(電気自動車)として登場する。 【写真】歴代チャージャーを一気に振り返る!(全10枚) ただ、新型チャージャーはEV専用車種となるわけではなく、純ガソリンエンジンを搭載したグレードも用意される見込み。しかし、パワーユニットは3リッター直列6気筒ターボへと変更され、アメリカ車を象徴する存在であったV型8気筒の自然吸気エンジンは用意されない。 そして、新型チャージャーには2ドア/4ドアというふたつのボディバリエーションが設定され、従来は2ドアクーペの「チャレンジャー」が担っていたカテゴリーもカバーすることになる。つまり、新型チャージャーは、従来のチャージャーとチャレンジャーの2車種を統合して誕生するモデルといえる。 ダッジ・チャージャーと同じインターミディエイトクラスに属するライバル車では、シボレー・カマロも2025年発売予定の次期モデルはEVとなることが報じられている。カーポンニュートラルという世界的な流れのなかで、かつて「マッスルカー」と呼ばれた大排気量V8エンジンを搭載したモデルたちは、次々に方向性を変えている。 ダッジ・チャージャーといえば、かつては独特の燃焼室形状を持つHEMI V8エンジンとともにNASCARを席巻し、近年では映画「ワイルドスピード(邦題)」劇中にも登場したことで、日本国内でも高い知名度と多くのファンをもつ。まもなく登場する新型では大きな路線変更をすることになるが、そんなチャージャーの歴代モデルを紹介していこう。 初めてチャージャーの車名を持つモデルが登場したのは1966年のこと。コンパクトとフルサイズの中間に位置する、インターミディエイトクラスの車体を持つセダン「コロネット」のシャシーをベースに、2ドアファストバックのボディを組み合わせたもの。このシャシーを当時のクライスラーは「Bプラットフォーム」と呼称していたため、この第一世代のチャージャーは「Bボディ」と呼ばれることもある。 ダッジ・ブランドを展開するクライスラーが、ゼネラルモーターズ(GM)やフォードの競合車種に対抗して送り出した初代チャージャーは、全グレードでV8エンジンを搭載するなど、走行性能を重視したラインアップとなっていた。なかでも最上位モデルに搭載された「426 Hemi」は、1964年にNASCARやNHRAといったモータースポーツシーンへ投入されて数々の勝利を挙げていたレース用エンジンを公道仕様としたもので、約7リッターの排気量から最高出力431馬力/5000rpm、最大トルク490lb-ft(664Nm)/4000rpmを発揮した。 その後も1967年に「マグナムV8」と呼ばれた440cu.in.(約7210cc)のエンジンを搭載するチャージャーR/Tが追加され、NASCARをはじめモータースポーツへの参戦を意識したモデルチェンジが行われるなど、初代ダッジ・チャージャーはスポーツイメージを加速していく。前後に大型のスポイラーを装着したチャージャーデイトナは、その象徴的なモデルといえる。 しかし1970年代に入ると厳しくなる排気ガス規制やオイルショックの影響により、初代チャージャーは毎年モデルチェンジのたびにパワーダウンを強いられるような状況となってしまう。そして、1978年まで生産されるが、かつてのマッスルカーらしさは失われた。