【老後資産運用の落とし穴】退職金を手にした時ほど要注意、営業マンに「言われるがまま」はNG 自分で金融機関と運用先を選ぶ姿勢が重要
2024年に開始した新NISAの影響で、資産運用への関心は高まり続けている。そんななか10月30日、大手証券会社・野村證券の広島支店元社員が顧客の80代夫婦宅で睡眠作用のある薬物を飲ませて、現金を盗んで放火した疑いで逮捕された。対面で相談できる窓口のある大手証券会社は安心感が高かったが、信頼のおけると思っていた証券マンが事件を繰り返している現実がある。では一体どうすればよいのか。【前後編の後編】
いったん頭を冷やす
窓口のある大手証券会社ではない選択肢として、コストを極力抑え、セールストークにも振り回されずに済むという意味では、ネット証券だろう。 ネット上で口座を開設し、株や投資信託などを自らの判断で選び、パソコンやスマホを操作して取引する。手間はかかるが、手数料は安い。 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏(ファイナンシャルリサーチ代表)が解説する。 「虎の子の運用ですから、もっと主体的に商品を選ぶべき。新NISAのつみたて投資枠には金融庁が低コストと判を押した商品がラインナップされているように、ちょっと目を凝らせば余計なコストをかけずに済むものを自ら選べます」(深野氏) 特に、定年を迎えて退職金を手にした時ほど要注意だ。「インフレに備えて」「人生100年時代だから」などと持ちかけられても、いったん頭を冷やす必要があると深野氏は言う。 「退職金はいきなり運用に回さない。銀行に預けるだけではもったいないと考えるなら、ひとまず『退職金専用定期預金』に預ける。通常の定期よりも金利がつくので、預けている間に勉強してからの判断でも遅くない」
そうは言っても、ネットが苦手な人にとっては、対面営業から突然シフトするのは難しい面もあるだろう。国内外の金融機関で勤務してきた金融文筆家の田代昌之氏が言う。 「まずできることは証券マンと向き合う時は一人ではなく、家族なり誰かに同席してもらうこと。自宅まで営業に来るなら上席の人間などを同席するよう要請したほうがいいし、支店に行くならいつもの担当者ばかりでなく他の担当者に問い合わせてもいい。複数の目が及ぶようにしておくのも自衛策になるでしょう」 不祥事が相次いだのは、むしろ良いきっかけだと深野氏はアドバイスする。 「言われるがままではなく、自ら金融機関と運用先を選ぶ。そのことがこれまで以上に求められていることに改めて気づかせてくれた。これを好機ととらえてほしい」 自分の資産を守れるのは、自分しかいないのだ。 ■前編記事:【証券会社で相次ぐ不祥事】「顧客にとって証券マンの存在がリスクになる可能性」手数料が高い商品を売り込まれる懸念、投資を一任するラップ口座も要注意 ※週刊ポスト2024年12月27日号