既存基地をフル活用 筋トレはボイラー室? 釧路航空基地に結集“空飛ぶ海猿”
9人全員が観光船事故で、初動対応や今も続く捜索活動などに携わっていて、チームをまとめる上席機動救難士の神谷高仁さん(41)は、訓練に取り組む姿勢を通して隊員たちの強い気持ちを日々感じているという。 神谷さん 「即戦力としてスキルが高い職員が集まったという印象。全員がそれぞれ思いを持ってこの基地に来てくれた。海難現場で必ず人命を救助するという強い使命感と、救助を完遂するという折れない心を訓練で培って海難救助、即応体制の強化に努めていきたい」
■基地の空きスペースをフル活用 筋トレはボイラー室で?
機動救難士の配置にあわせて、格納庫の隣にプレハブ部屋がつくられた。出動に必要なドライスーツやウエットスーツ、ロープなどの資機材が所狭しと並べられている。中には、全国の別の基地から集めた資機材もあるという。
また、救助活動に必要な体力を養うため、航空基地の空きスペースをフル活用して隊員たちは時間を見つけて日々トレーニングに励んでいる。 筋トレルームとなっていたのはボイラー室。フィットネス用のバイクやダンベル、バーベルなどが用意されていて、ボイラーの稼働音が響く中、汗を流している。そして、天井の隙間を利用して、懸垂バーも設置。上席機動救難士の神谷さんは、軽く30回の懸垂をこなしていた。
オレンジ服を着続けるためには、トレーニングは欠かせないといい、救助の過程で必要なのは「最後は体力です」と笑顔をみせた。
■活動の場は海だけでなく陸上も
釧路航空基地は、機動救難士9人が配置されたほか2023年度中にヘリコプター1機が追加され、3機体制となる予定で釧路を拠点に知床半島を含む道東エリアがカバーできるようになる。 しかし今、彼らに求められるのは海での救助だけではない。道東地域は「海溝型地震」の発生が懸念されていて、津波によって被害が想定される陸上での救助対応も迫られているのだ。 神谷さん 「北海道全体を見ると救助機関は道央圏・札幌圏に集中していますが、東側を見ると救助機関はあるもののヘリによる救助は釧路でいうと海上保安庁。陸上災害への備えは、当基地の機動救難士には求められていると思います」 現在、市街地を想定したより高い高度でのつり上げなど、陸上災害に対応するための訓練を行っているほか、他機関との連携を深めることも継続してやっていくとしている。 事故をきっかけに救難体制を新たにした海上保安庁。人員や資機材の強化だけでなく、今後は海にとどまらない救助体制の柔軟な運用が重要となる。