福井・女子中学生殺害の再審開始決定、日弁連が会長声明「裁判所の訴訟指揮を高く評価」
福井市で1986年、女子中学生が殺害された事件で、名古屋高裁金沢支部(山田耕司裁判長)は10月23日、殺人罪で服役した前川彰司さんが裁判のやり直しを求めていた第2次再審請求を認め、再審開始を決定した。 再審開始決定を受け、日弁連(渕上玲子会長)は同日、裁判所の判断を高く評価すると同時に、検察官に対して異議申し立てを行うことなく確定させるよう強く求める会長声明を公表した。 ● 第2次再審請求で新たな証拠 会長声明によると、前川さんは事件の発生から1年後に逮捕されたが、一貫して無罪を主張してきた。 福井地方裁判所は1990年9月、関係者らの供述の信用性を否定し、無罪判決を言い渡したが、名古屋高裁金沢支部は1995年2月、懲役7年の逆転有罪判決を下し、最高裁で確定した。 前川さんは日弁連の支援のもと、2004年1月に第1次再審請求を申し立て、再審請求審(名古屋高裁金沢支部)で2011年11月、関係者らの供述の信用性が否定され、再審開始が決定された。 ところが、再審異議審(名古屋高裁)は2013年3月、新たな証拠は旧証拠の証明力を減殺しないとして再審開始決定を取り消し、特別抗告審でもこれが維持された。 今回の第2次再審請求は2022年10月に申し立てがされ、弁護団は新たな鑑定を提出するとともに、裁判所の訴訟指揮などもあり、警察が保管する捜査報告メモなど287点の証拠が新たに開示された。 ● 再審開始決定に対する「弊害」も指摘 日弁連は声明で次のように述べている。 「当連合会は、裁判所が再審における証拠開示や事案の解明に向けて積極的な訴訟指揮を行ったこと、そして本決定において新旧両証拠を総合評価して適切な事実認定をしたことを高く評価する。他方、確定審以来、証拠開示について消極的な姿勢に終始し、事案の解明及びえん罪被害の救済を阻んできた検察官に対して、真摯な反省を求めるとともに、本決定に異議申立てを行うことなくこれを確定させ、再審公判への途を阻害しないよう強く要請する。 また、本決定により、再審請求審における裁判所の積極的な訴訟指揮や証拠開示がいかに重要であるかが再認識された。加えて、前川氏が最初の再審開始決定を受けてから10年以上が経過してもなお再審公判を受けることができていない点には、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが認められていることの弊害が表れている。 当連合会は、再審公判において無罪判決が確定するまで前川氏を支援し続けるとともに、再審請求手続における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止及び再審請求審における手続規定の整備を含む再審法改正の速やかな実現を目指し、全力を尽くす所存である」
弁護士ドットコムニュース編集部