ガルウイングにした本当の理由は? AMG初の独自開発「SLS AMG」はメルセデス・ベンツ「300SL」の再来でした
伝説のメルセデス・ベンツ300SLを彷彿させるSLS AMG
1950年代に一世を風靡した、メルセデス・ベンツ「300SL」ガルウイングクーペの再来とうたわれたのが、2009年9月にフランクフルトモーターで発表された「SLS AMG」です。これは、メルセデス・ベンツとAMGの両ブランドの強みを活かしたスーパースポーツカー。つまり、いまやメルセデス・ベンツの伝説となった300SLガルウイングのスタイルにAMGの技術を注ぎ込み、理想的な形で融合させて現代に蘇えったのです。最高のドライビングを楽しむため、コクピットに注ぎ込まれたこだわりとは? 【画像】優雅なスタイリングが特徴的!「SLS AMG」のインテリアを見る(17枚)
「AMGの理想を追求し具現化する」という開発コンセプト
メルセデス・ベンツ「SLS AMG」の開発コンセプトとしては、「最大限の低重心化」が大きなテーマになっている。つまり、ドライブトレインとアクスルの接続部の位置を低くするとともに、ホワイトボディのコンポーネントも可能な限り低重心設計として、高剛性を実現することにある。 当時のメルセデスAMG社が、それまでシャシー、ボディから開発した車両としてはレース用の「CLK-GTR」などがあった。1967年の創業以来40年を超えてAMGのスポーツカーやレーシングカーを開発してきた経験とノウハウを注ぎこみ、AMGが「ピュアリズム(純粋主義)」のコンセプトのもと、ゼロから開発した最初の市販車がこのSLS AMGである。したがって、AMGが理想と考えるスポーツカーを追求し、具現化するというコンセプトで開発されたのである。
「Aviation」をデザインテーマに航空機のモチーフも取り入れられた
SLS AMGのデザインテーマは「Aviation(飛行)」。Aviationはラテン語で鳥を意味する「avis」に由来し、飛行(術)・航空(学)を意味する。外観は、ジェット航空機に着想を得ている。大きく翼を拡げるガルウイングドアやリトラクタブル・リアスポイラーは、今にも離陸し低空飛行からすぐさま高速飛行しそうなダイナミック性を表現した。 室内にも随所に航空機のモチーフを採用している。フランクフルトモーターショーでの発表会で、メルセデス・テックセンター(MTC)のデザイナーはテーマである飛行をイメージしながら、外観&内装のデザインを1:1のスケールで壁に投影して開発の舞台裏を披露した。例えば、ダッシュボードは翼のようなスタイルにより視覚的にワイドな印象を与え、調節可能なエアコンの十字型アウトレットはジェットエンジンのデザインをモチーフにしたこと。AMG E-SELECTレバーは航空機のスロットルタイプを採用している。したがって、このようにデザインされたダッシュボードと見やすい計器類や手の届きやすい操作類などは、まるで航空機の操縦席並みで、乗り込むとドライバーは瞬時にしてパイロットとなれるのだ。