「子どもに外食させて親は自炊」 世帯年収1000万円はもはや「勝ち組」ではない…彼らの生活はなぜ厳しいのか
外食も控えて…
最近増加している進学塾や私立中高の特待制度で教育費を抑える方法もあるが、当然ながら誰もが利用できる制度ではない。収入が増える見込みがない限り、可能な限り支出を切り詰める必要に迫られるはずだ。 そうなると、年末年始や夏休みの家族旅行費は真っ先に削減せざるを得ないだろう。宿泊費に新幹線代、航空券代が家族3、4人分かかれば、国内でもすぐに10万円を超えてしまう。インバウンドの拡大で観光地のホテル代が高騰している影響もあり、筆者の友人は年末に北海道旅行に行こうと旅行サイトで見積もりをしたところ、標準ランクのホテルに泊まり格安航空を往復利用しても家族4人で50万円近くになり、諦めたという。ましてこの円安下にあっては海外旅行などもってのほかだ。 また、マイカーはそもそも所有しないか、手放さざるを得ないのではないか。駐車場代やガソリン代等の維持費を合わせた月数万円のマイカー費用を浮かせるために役立つのが、電動自転車だ。子どもの送迎はもちろん、休日のレジャーもすべて自転車を駆使し、子どもを荷台に乗せて十数キロを移動する強者もいると言う。 もちろん外食は極力避ける必要がある。共働き家庭の場合、完全に外食なしの生活は難しいかもしれないが、行くとしても低価格帯のファミレスか1皿100円の回転寿司が限界で、子どもに好きな料理を注文させても、親は周囲の目を気にしながら注文せず、帰宅してから自炊するという涙ぐましい話も聞く。
「働き損」「子育て罰」
このように、都市部では世帯年収が1000万円あっても、特に子ども2人が私立中高に進学するような場合、親はつましい努力を重ねることになる。最低限の生活には不自由しなくとも、従来の「1000万円」のイメージとはかけ離れた、実に質素な印象を抱くのではないだろうか。 今年に入り、東京都は私立中の子どもに対する年間10万円の授業料補助や、高校(私公とも)および都立大学の無償化において所得制限を撤廃する方針を正式に決定した。これらの制度では、国の児童手当とほぼ同様に、従来は目安年収1000万円前後を境に補助の可否が決められていた。 ひと昔前の設定がそのまま続いている所得制限は、ギリギリ対象外となる年収1000万円前後の世帯にとっては致命的ともいえ、「働き損」とも「子育て罰」とも捉え得る仕打ちだったのではないか。今回の子育て支援策は遅きに失した感すらあるが、今後の継続、そして更なる改善を期待したい。 子どもの教育にお金がかかり過ぎたがために老後破産の危機に瀕する場合も少なくない。試算で示した通り、子どもの進路によっては、前述のようなつましい生活を送ってもなお破綻と隣り合わせの家計が続くことになる。また、銀行にお金を預けているだけで年に3%や5%といった利息がついた時代とは打って変わり、今は預金ではほとんどお金は増えない。それどころか、インフレ局面に入り現預金の価値は目減り状態だ。 かつては鉄板の方法といわれた学資保険の利率も現在は非常に低く、お金を増やす目的として優れているとは言い難い。生活防衛のためには、預貯金や保険にとどまらず株式や投資信託等を含めた幅広い選択肢を持ち、自分で選び、運用できる金融リテラシーを身に付けることが不可欠になりつつあるのだ。