「子どもに外食させて親は自炊」 世帯年収1000万円はもはや「勝ち組」ではない…彼らの生活はなぜ厳しいのか
「子どもを持つこと自体難しくなった」
ひと昔前では考えられないような「1000万円世帯」の悲痛な叫びがある一方、「今の子育て世帯が昔よりぜいたくな暮らしをするようになっただけでは」「そんな世帯に子育て支援を拡充するのは納得がいかない」という声も聞こえてきそうだが、現実はそう単純ではない。子育て世帯の平均収入が大幅に上がったということは、裏を返せば「一定程度の収入がないと子どもを持つこと自体難しくなった」ということではないか。 実際、2021年に国立社会保障・人口問題研究所が行った、予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦を対象にその理由を尋ねた調査では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が回答のトップとなっている。 いったい何にそんなにお金がかかるのか。なぜ年収が1000万円あっても生活が厳しいのか。そこには、当事者以外には想像し難い複雑な事情があった。
住居選びも楽ではない
最大の要因の一つが増税と社会保険料の引き上げだ。この20年あまりで、年収1000万~1250万円世帯の負担額は年間約165万円から約225万円へ増加した。手取り収入が60万円減ったということだ。これだけ見ても、昔の年収1000万円と、いまの年収1000万円では、実質が全く違うということがお分かりいただけるだろう。 子育て中には住宅購入をするケースも多いが、住宅価格もかつてないスピードで上がっている。価格動向を示す不動産価格指数は直近で2010年比35%増、マンションに限ると2倍近くまで高騰している。2010年には5000万円弱だった23区の新築分譲マンションの平均価格は現在、1億円を超えるほどだ。人生設計を根本から揺るがしかねないほどの住宅価格高騰を前に、かつては通過儀礼のごとく買うのが当たり前だったマイホームも、夢のまた夢になりつつある状況だ。 「買えないから賃貸」というのも簡単ではない。不動産高騰の影響は賃貸価格にも及んでいる。ファミリー物件の賃料相場は過去最高レベルに達しており、23区では月20万~30万円の家賃を覚悟しないと暮らせない。このように、今の子育て世帯は、生活の土台となる住居選びの段階から困難に直面せざるを得なくなっているのだ。