【通園バス置き去り】発生から2年…3歳女児の命が奪われた事件の教訓はどう生かされてきたのか(静岡)
静岡・牧之原市の認定こども園で、3歳の女の子が通園バスに置き去りにされ死亡した事件から5日で2年。事件の教訓が、この2年でどのように生かされてきたのか取材しました。 牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通っていた河本千奈ちゃん。残暑厳しいおととし9月、エンジンを止め、窓を締め切られた通園バスに5時間にわたり置き去りにされ重度の熱中症で死亡しました。 痛ましい事件から2年の9月5日。事件現場である駐車場には、千奈ちゃんが大好きだった麦茶などが並び、朝から献花に訪れる人の姿が。 川崎幼稚園を運営する榛原学園の現・理事長らも献花に訪れました。 この事件を巡っては、元園長と元クラス担任が業務上過失致死の罪に問われ、静岡地裁は7月、元園長に禁錮1年4か月の実刑判決、元クラス担任に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡し、刑が確定しました。静岡地裁の國井恒志裁判長は、「わずか3歳11か月で生きる権利を奪われた苦しみは想像に絶する」などと結果の重大性を指摘。元園長に対し、「運転手として人数確認をすることや方法を知らず、補助員が人数確認をしたと思い込むなど安全確保をしなかった過失は著しい」などと園のずさんな管理体制を指摘しました。 (千奈ちゃんの父親) 「命を落としてしまって、元通りに戻らない。千奈ちゃんは本当に私たちが経験したことのない苦しみを味わいながら亡くなったので、これで実刑になって良かったね。とは思えない。それでも助けられなくてごめんなさいと言う、親としてはそう思うのではないか」 判決後、このように話していた千奈ちゃんの父親。8月31日、千奈ちゃんの3回忌を行った日に取材に応じた父親は。 (千奈ちゃんの父親) 「生活を戻そうと頑張ってきたが、 悔しい気持ちは深い部分に残っていて、忘れることはできない」と話し、川崎幼稚園の廃園を強く求めていて、千奈ちゃんのことを思うと涙を流す日もあるといいます。 (千奈ちゃんの父親) 「私は思い出と重なったとき、千奈ちゃん、家のこの場所でこういうことやってたな、よく遊んだ公園だなと思いだしたときにグッとくる」 また、千奈ちゃんの父親は、SNSで侮辱的な書き込みが絶えないことも訴えていて、悪質なユーザーを開示請求により特定し民事訴訟を起こしています。 なぜ、車内にいた千奈ちゃんに気付くことができなかったのか…。 国は、事故を受け、2023年4月から送迎バスへの安全装置の設置を義務づけ、2024年3月までに設置しない場合は、行政指導、改善命令などの対象になります。県によりますと、1台を除く99.9%で安全装置の設置が完了しているということです。 静岡市葵区の「とこは幼稚園」。3台のバスを所有していて、3台とも2023年6月に「安全装置」を設置しました。 (とこは幼稚園) 「おはようございま~す」 子どもたちを乗せた送迎バスが園に到着しました。園児を降ろし終え、運転手がエンジンを切ると…。バスの最後部に取り付けた装置から音が鳴りはじめます。止めるには運転手が後ろまでスイッチを押しに行く必要があり、これにより“バスに残った子どもがいないか”確認を促す仕組みになっています。 (送迎バス運転手 外川 稔さん) 「降りるときに、やっぱりバスの中に降ろし忘れ、そういったことが起きないひとつの手段として、自分も見る。でも機械の方でも安心をさせてもらえる、そういうつもりで安全装置を使っているつもりです」 安全装置の義務化から1年半。園では、安全装置の導入後も、点呼やアプリなどを使い、二重三重にチェックしているといいます。 (とこは幼稚園 池田 美穂 園長) 「園バスに関しては、乗っている人数、きょうは乗らないよっていう人数、その把握はきちんと、バスの担当者だけではなくて、園にいる職員も確認するということで、みんなで確認っていう体制を気を付けているんですね」 痛ましい事件を機に義務化された安全装置の設置。二度と同じことを起こしてはなりません。