アプリ活用で高血圧治療 ~データ〝見える化〟で生活習慣を改善~
国内に約4300万人の患者がいるとされる高血圧症。放っておけば脳血管障害(脳卒中)や心筋梗塞など脳や心臓の大病につながる。しかし、症状がある人のうち、治療を受けているのは半数ほどにとどまる。さらに、根本的に治すには生活習慣の改善が重要だが、これは患者個人のやる気や行動によるところが大きく、十分な効果は出にくい。この状況を変えるため、スマートフォンの治療アプリが登場。高血圧症の治療をサポートしている。
◇薬と同じように処方
医療系ベンチャー企業の「CureApp(キュア・アップ)」は2022年、高血圧症治療アプリを発売。各地の医療機関で成果が上がっている。アプリの活用で医師がこれまでやりたくてもできなかった「本質的な治療」が可能になるという。 高血圧症の治療は、主に降圧薬による薬物治療と、生活習慣の改善。降圧薬は有効な半面、服用をやめると血圧は元に戻ってしまう、いわば対症療法だ。 患者は月に1度の診察で薬を渡され、医師から「毎日がんばって生活習慣を改善して」と言われる。しかし、一人ではなかなか難しい。医師も患者一人一人の生活を全て把握できるわけではない。 「そもそもの生活習慣を正す『根本治療』が必要だと感じていた。米国ではアプリを活用し実行できていたので、日本でも広めなくてはいけないと思った」と話すのは、CureApp社長で内科医の佐竹晃太氏。 このアプリは薬と同様に治験で有効性と安全性が確認され、国の薬事承認を取得。保険適用で処方される。 患者はスマホでダウンロード。処方時に指示された、起動するのに必要なパスワードを入力すると利用できるようになる。
◇アプリ、使ってみた
どんなアプリなのか。デモ画面で体験させてもらった。 毎日入力するのは血圧と脈拍。自分で計測するか、ブルートゥース(無線通信)機能を搭載した血圧計と連携させれば、より手軽に記録できる。一日の活動を項目ごとに5段階で評価するのと、体調・ストレスの感じ方などを自由入力できる一行日記のような「振り返り」も合わせ、10分程度で終了する。 使い始めてから2週間は「教育プログラム」で高血圧症に関する知識を1日1プログラム学習する。クイズ形式でキャラクターと会話しながら進めていけるので、楽しく取り組めた。 例えば、「減塩」の項目では、調味料の使い方や何をよく食べるかなどを答えていくと、一日にどれくらい塩分を取っているのか、レベルで表示される。 みそ汁が食卓に頻繁に上がる人には「汁は一口だけ飲むようにしよう」、すしが好きな人には「しょうゆは小皿に出すのではなく、小さい霧吹きに入れてスプレーして。しょっぱさの感じ方を変えずに塩分を減らせる」といったメッセージが来る。 「カリウムを取るには両手のひらに乗る量の野菜を食べる」。通知内容は具体的で分かりやすい。本来なら医師が診察でアドバイスする内容を、アプリが代行してくれるのだ。 記者も塩分を取り過ぎていることが判明。自分では気を付けていると思っていたが、そうでもなかったようだ。