グレース・ケリーに果てしなく近づく名演/映画評『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』
時代背景は1960年代。タイトルやポスターを見る限り、政治色が強く、庶民の生活とはほど遠い公妃を描いた作品。きっと馴染みにくい映画だろうと予想していたが、鑑賞してみると、印象は大きく変わる。ニコール・キッドマン演じる往年の大女優、グレース・ケリーは、大スターであったものの、公妃としての立場は決して、“スター”ではなく、アメリカからモナコ宮殿に嫁いだ1人の女性。もちろん、華やかな舞台は慣れているものの「アメリカ流」と皮肉られる。そんな苦悩をかいま見ると、親近感を持って彼女を応援したくなる。
作品の中でグレース・ケリーは、フランスとの外交の『切り札』として、大役を引き受ける。そのための外交儀礼の特訓は、ハリウッドスターと言えども未経験。公妃として使われるフランス語は、それまでのグレース・ケリーが知っているものとは違う次元のもの。モナコの運命を背負っての立場だからこそ、緊迫感も尋常ではない。習得のため、早口言葉のような特訓は、外から見ている分には、笑いを誘うが当時のグレース・ケリーも、それを演じたニコール・キッドマンも相当な苦労があっただろう。 では、グレース・ケリーにどこまでニコール・キッドマンが近づけたか、というと、本物と見間違うようなシーンも時折あり、往年の作品を支持するファンにとっても満足いく出来に仕上がっている。劇中のもう1つの主役、華やかなジュエリーやドレスも見どころの1つ。婚約指輪として贈られた『10.47カラット』のカルティエのエメラルドカットのダイヤモンドリングも、モナコ公国同意のもと、カルティエで完璧に複製されたものが登場。ストーリーとは別に、華やかすぎ装飾の数々を楽しむことができるだろう。 『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』 監督:オリヴィエ・ダアン 出演:ニコール・キッドマン/ティム・ロス 配給:ギャガ (C)2014 STONE ANGELS SAS 10月18日(土)TOHOシネマズ有楽座ほか全国公開