芸能人の子息も通園…港区・元麻布のセレブ保育園で起きた「保育士の自殺未遂」「虐待隠ぺい疑惑」
上の写真は’23年3月4日、都内のホテルで行われたある医療法人のパーティーの模様だ。壇上で鏡割りをしているのが岸田文雄総理(66)、そして右は医療法人社団桐和会ユニバーサル・メディカルサービス(以下、タムスグループ)の岡本和久理事長(60)。病院、クリニック、介護施設、保育園など約70ある事業所を束ねるタムスグループのトップだ。このグループが30周年を迎えたことを記念して行われたパーティーで開成高校の校友である岸田総理を招き、当日は総理による挨拶の言葉もあった。 【写真】何度もビンタして…児童虐待で娘が死亡「暴力母の戦慄素顔」写真 そんなタムスグループの傘下にある社会福祉法人「春和会」が運営する東京・港区の「元麻布保育園」は3月23日に卒園式を迎えた。しかしその後、同園の園長の名前で保護者に対して職員の退職に関する異例のメッセージを送っていた。同園に通う園児の親はこう明かす。 「副園長3名を含む12人の保育士が辞める旨が書かれ、保育士が働きやすい環境を作っていくので安心してほしい、といった内容でした。もっと言うと、この保育園が発足した’20年から3年間で毎年20人以上の保育士が辞めていると聞きました。それぞれ事情があるのでしょうけど、多すぎる気がします」 港区が公表している「指定管理施設評価票」によると、元麻布保育園の職員数は80人。退職者数は′20年、´21年が25人、´22年も20人。昨年度に辞めた保育士12人をあわせると延べ82人が辞めた計算になる。 元麻布保育園は0歳から5歳までの児童を受け入れる。「医療的ケア児」「障害児」クラスを園内に設けた東京都23区で初の保育園だ。港区では多様化する区民のニーズに応えるため、民間事業者が持つノウハウやアイディアなどを活用したいと考え、’18年に「指定管理者」として保育園を運営する法人を公募。複数あった候補の中から、タムスグループの社会福祉法人春和会を指定管理者として選び、´29年3月末までの約10年間を指定期間とした。港区内の保育園関係者はこう明かす。 「春和会は医療法人グループの傘下にあり、保育園の中に『医療的ケア児』『障害児』のクラスを開設したかった港区は、病院を運営しており、医師や看護師や保育士を傘下にある施設から異動することが円滑にできることが利点と考え、指定管理者として選んだと思います。 元麻布保育園は、外国の大使館などが近くにある閑静な住宅街に位置し、地上2階建て、敷地面積が3000㎡近くある破格の広さ。土地と建物で55億円近くした、とも聞いています。収入に余裕のあるご家庭の方々が住んでいる地域なので、NHKの連ドラに出演経験があり、CMにも出演中の女優Aさん、家族二代にわたって知られているベテラン俳優Bさん、ドラマの主題歌を歌ったことがあるミュージシャンCさんのご子息などが過去に通っていたようです」 立地に加え、港区からのバックアップなど恵まれた環境にありながら、保育士が大量に退職する異常事態が続いたのは、いったいなぜなのか。 開成高校を卒業後、千葉大医学部を卒業した岡本理事長はもともと放射線科の医師だった。桐和会の病院で勤務経験のある看護師はこう明かす。 「理事長が若い頃、かかりつけの患者の方で認知症の人がいて、入院したと聞いて様子を見に行ったら(患者さんが)精神科の閉鎖病棟に入れられていたことがありました。当時は認知症というだけで入院を断られたり、診てもらえない患者がいた。そこに疑問を感じ『生まれてから亡くなるまで、人の一生の面倒を見られるグループ、施設を作りたい』という思いを抱いたそうです」 その理想が病院からリハビリ施設、保育園とさまざまな施設を作ろうというモチベーションになった。´93年に東京・江戸川区の篠崎にクリニックを開業。´06年には埼玉・川口に認知症専門の病院を作った。現在まで約70施設、従業員数約6000人と事業を拡げたが、新しく立ち上げた医療施設が軌道に乗る前に次の新しい事業に着手するため、現場のスタッフは疲弊した。 「理事長はとにかく数字にこだわる人です。入院患者数などをつぶさにチェックし、たとえば病棟に80床あったら、50床満たされていないと現場に厳しい要求がくる。私たちの間では『患者さんの顔が¥マークに見えているんじゃないか』という冗談が出たほどです」(タムスグループの病院で働いたことのあるスタッフ)