WBCに挑む侍ジャパンの「悔しさを知る5人が背負う役割」とは?
WBCのシビアな戦いを知る松田は日本が勝つポイントはチームワークだという。 「日本人の良さは個人プレーに走らないこと。だからチームワークで勝負したい。相手はメジャーを軸とした個の力。アメリカ、ドミニカ、ベネズエラは特にそう。だから、その勝負は挑まない。そういう個に対して、こちらが束になってかかっていくイメージ。僅差の試合をもぎとる展開しか見えてこない。大差では勝てないと思う。点を取るスポーツだが、点を与えなければ負けない。みんなで打線を線にしてがんばりたい」 それでもWBCの戦いが想像を絶するものであることは、よくわかっている。 「自分の持っているものを認められて小久保さんが選んだメンバー。28人が持っているものを出せるのかどうか。これまでやってきたこともないことをやろうとするのは駄目。凄いメンバーの集まりであり、いろんな色の集まりだけど、全員が持っているものを100パーセント出せば勝てると思う。でも、それを出させてくれないのが野球だし、WBCではそういう力を持った相手と戦うことになる」 「前回は負けている。簡単じゃない。難しくなるのは当然で、2次ラウンドで出てくるであろうオランダもメンバーは強化試合と違ってきている。前大会ではマー君でさえ点を取られた。油断はできない。前大会では、アメリカに行ってから、ガラっと雰囲気が変わった。完全にアウェーになった。だからこそ、1、2次ラウンドを東京でできるのは大きなアドバンテージ。負けられないし負けるわけがない」 そういう世界の戦いを知っているからこそ新しいメンバーに伝えたいものもある。 「WBCの難しさのひとつが、ほとんどの投手と一度しか対戦しないこと。たとえ大谷でも、何回も対戦すると対策がわかってくるが、1打席勝負という難しさがある」 WBC特有の一発勝負の壁を克服するためには、イメージ作りが重要だと考えている。 「相手の姿を消して、結果だけをイメージすることだと思う。内川さん、井端さんは反対方向、グラウンドをセンターで切って右へ全部運ぶイメージを抱きチャンスで打った。左投手ならば全部引っ張ってやれ、どまんなかの甘めにくるならば左中間に運んでやれ、というくらいのイメージを抱くことだと思う。もちろんリスクもあるが、ストライクゾーンで勝負することを忘れずにスイングはコンパクトにしなければならない」 松田は、今大会も続けて「9番・三塁」での起用が有力。3年前の日米野球では、第2戦に一発を含む3安打の大爆発をして、8―4で迎えた9回の2死二塁では、メジャーから敬遠で歩かされた。一度、打ち出したら手がつけられない。それが松田の魅力でもあり、大会中に期待される部分でもある。 「僕が求められているのは、わけのわからん爆発力だと思う(笑)。それをここぞという場面で出したい。0-0の緊迫した同点でガーンとか。日本が救われた、という一打を打てるバッターでいたい。そこを求められていると思う。打順は何番でもいい」 合宿インを前に“侍の熱男”は改めてV奪回へ挑む熱い決意を語る。 「プロで日本一の光景は3回見た。でも世界一の光景はない。国を背負っての戦いの中で、それを見てみたい。決勝のドジャースタジアムで、勝ったときの風景を見てみたい。そこをイメージしておく。そこで勝つことが、すぐ開幕を迎える2017年のプロ野球の盛り上がりにつながると思う。その意味でも勝ちたい」 絶対に負けられない名誉挽回の戦いが、いよいよ始まろうとしている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)