“総延長100キロ”ヒグマ侵入を防ぐ「電気柵の長城」構想―住宅街に出没し4人負傷…3年たち模索し始めた“すみ分け”
「死ぬかと」襲われた男性 あばら骨折で肺気胸
誰にとっても想定外だった。突如後ろから襲われてケガをした安藤伸一郎さん(46)もそのひとり。通勤のため、自宅から地下鉄の駅に向かって歩道を歩いているところだった。ヒグマは後ろから体当たり。覆いかぶさり、何度もかんだ。 「突然で襲われた瞬間はワケがわかりませんでした。時間的には30秒、体感的には1分ぐらいやられていた。何回も噛まれているので、実際死んじゃうのかなって思いました」(安藤さん) あばら骨が6本折れて肺気胸になった。噛み傷と切り傷で100針以上縫った。被害から3年がたった今も痛みに悩まされ、今年夏、電気を流し、痛みを緩和する手術をひざと脇腹に施した。
100年以上経ち再びヒグマ被害 痕跡を調査
今回より前に東区でヒグマ被害があったのは、1878年(明治11年)のこと。冬眠から目を覚ましたヒグマが猟師や開拓民を襲い、死者4人を出したと言われている。当時はまだ原始の森があたりに広がっていた。空港が整備され、人が住むようになったこの地に、なぜ100年以上経って再びヒグマが出没したのだろうか。 行政機関や研究者らは痕跡を徹底調査。ふんや足跡、目撃情報から、ひとつの結論に至った。 「オスがメスを求めて南下した結果、住宅地にたどりついてしまった。札幌の北、10キロ以上離れた増毛山地から、当別町を通って、石狩川を渡り、伏籠(ふしこ)川や水路を通って札幌市東区の住宅街に到達した。草が茂って身を隠しやすかったと考えている」(札幌市の担当者)
総延長100km…電気柵敷設の壮大な計画
調査結果を受け、通過点とされた当別町で動き出した人がいる。野生動物用のわなや電気柵の製造・販売会社「ファームエイジ」を営む小谷栄二さん(65)。石狩平野と北側の山地の境に総延長100キロの電気柵を敷設する計画を唱えた。まるで“万里の長城”だ。 「当別町から新十津川までの直線で50キロ、総延長100キロ電気柵を使って緩衝帯を作れば、北海道の北側のクマとすみ分けができます。電気柵で人の生活圏に入って来られないようにし、乳牛や肉牛を放牧し経済活動も可能にします」(小谷さん)
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