料理宅配サービス「ウーバーイーツ」で架空の注文と配達を繰り返し、配達報酬を詐取したとして、飲食店経営のベトナム人らが電子計算機使用詐欺罪で起訴された事件で、日本人の男6人が配達用アカウントを提供したとして共犯に問われている。男らの公判で浮き彫りになっているのが、報酬につられ、アカウント貸しの募集に安易に応じる状況。捜査当局はアカウント貸しは犯罪に悪用される恐れがあるとして注意を呼びかけている。（丸山滉一） 【チャート図】配達報酬詐欺事件の構図

福岡県警察本部

　「アカウントを貸すだけで月9万円もらえる副業をしませんか――」。福岡市博多区の会社員の男（55）は昨年2月、パチンコ店駐輪場に止めた自身の自転車のかごに入っていたチラシに目が止まった。借金を抱えていた男は、記載されたQRコードをスマートフォンで読み取ると「ハッチー」と名乗るLINE（ライン）に誘導された。

　今月1日に開かれた男の公判などによると、「ハッチー」は福岡市東区の無職の被告（42）。男は「1日3000円もらえる」と言われ、ウーバーイーツの配達員として登録し、登録したアカウント情報を入れたスマホを被告に渡した。

　男の銀行口座には運営会社側から昨年3月から約1年間で配達の報酬として計480万円が振り込まれた。うち2割の約100万円が男の取り分で、残りは口座から引き出して被告らに現金で渡した。

　男は公判で、検察側から取り分の使途を問われ、「お小遣い感覚で生活の足しにしていた」と供述。福岡地裁は懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡した。判決後、男は取材に、「うまい話なんてないと気づくべきだった」とうなだれた。

2年間で3000万円

　運営会社によると、配達員としての登録には、専用アプリをダウンロードし、身分証明書やキャッシュカード、自身の顔写真の撮影・送信などが必要で、同社側の審査を通ればアカウントが得られる。

　捜査関係者によると、アカウントを提供したなどとして起訴された6人はこの配達員としての登録を済ませ、アカウントのIDやパスワードを被告に伝えるなどしていた。6人の口座には、ウーバーイーツの運営会社側からこの約2年間で計約3000万円が振り込まれていたという。