【対談】北(ルサンチマン)×オサキアユ(さよならポエジー)「“ロックとは”みたいな指標があって、ルサンチマンはそれにぴったりなんですよね」
――WWWでやったことによって得たものとか、そこから自分たちの成長の糧にしていった部分も結構ありますか? 北 ありますね。和気あいあいとライブをやるスタンスがまったく自分たちに合ってないことを、そこで確信したというか。さよならポエジーみたいなスタンスのバンドに自分はなりたかったんだなって。方向性がそこで定まった。 ――2021年に初めてツーマンをやってから3年ぐらい経つわけじゃないですか。その間にルサンチマンもライブをたくさんやり、作品も出し、バンドとして進化してきた。その中でさよならポエジーという存在は憧れの対象みたいなところから変わってきてますか? 北 いや、憧れはあるんですよね。 オサキ でももうそこまで遠くない存在にはなったもんな。 北 そうですね。LINEとかも、完全にではないですけど、あんまり緊張しないでできるようになった(笑)。最初は緊張したんですけど。たぶんちょっと圧をかけてると思うんですよね、LINEで。無意識かもしれないですけど、言葉遣いとかが結構厳かなんですよ。 オサキ それも脳内フィルターですよ。そんな、LINEで圧かけるとかないじゃないですか。 北 圧じゃないですけど、すごい威厳を感じるんですよ。 オサキ でも俺、結構可愛いスタンプとか使ってるけど。 北 僕に対してはスタンプ1個も使ってないですよ。だから怖かったですよ、最初にLINEした時とか。でも会って喋ってると、意外と――普通とは思わないですけど、近くだなって思いますね。 オサキ 普通になりてぇ。 ――歌詞とか楽曲の部分で影響を受けてるなってことはあるんですか? 北 対バンしてから、2022年くらいにできた曲は結構ガッツリ影響を受けちゃったなって思うんです。でも影響を受けすぎちゃってもやっぱりダメだなって思って。ジェネリックさよならポエジーみたいな感じになっちゃうのもよくないし。やっと新しいアルバムで自分たちらしさを確立できた感じがあって。 オサキ すごく多感な時期だと思うんですよ。まだ20代前半とか、最近20歳になりましたぐらいの時期。自分もそうやったし、僕にも憧れた先輩とか先人がいて、同じようにすごく影響を受けてしまうというか、感化され続けてしまうんですけど、その影響みたいなものからどう迂回して作品や自分を作り上げていくかっていうことを、僕はオリジナリティって呼んでるんですよ。生まれた時から独特な雰囲気を持ってる人もいるけど、俺とか、今の北の話もそうですけど、好きな人の影響を受けてその体温とかをどう迂回して自分のフィルターを通してアウトプットするかっていう道筋がオリジナリティだと思ってるんで、今の話はマジで正しくて。バンドマンとして真っ当な成長の道を歩んでいると思います。 ――最新曲の「ここにいた才能」なんか、まさにその迂回の軌跡みたいなものがすごく滲んでる感じがしますよね。 北 自分の中では、今のところ世に出ているものだと最高傑作ができたなっていう気持ちがあります。わりと自信をもってアユくんにも送れた。 オサキ うん、インストの方がよかったです(笑)。音がよくて、さよならポエジーでも共有しました。インストで勝てるっていうのはルサンチマンの武器ですから。 ――今度のツアー「TOUR→HOMEツアー」では、インストだけの日とかもあったりしますしね。 オサキ あんなもん、最高じゃないですか。こいつら最高やなって思いますよ。今回は事前に提示してたけどさ、突拍子もなくそういうことやる時もあったやろ。 北 昔はありました。 オサキ そういうのをどっかで知ったタイミングで、「こいつらめちゃくちゃやりよるんだ」っていうのが、本当にかっこいいなって思いましたね。「荻窪」を6回くらいやったっていうのなかった? 北 そういう時期もありました。 オサキ 嘘やと思ってたけど、ほんまにやったんや。 北 正しくは「荻窪」を5回やって、アンコールでもう1回やった。それで嫌いになったっていう人も2、3人SNSで見ました。 オサキ それは「どうぞ」って感じやろ? 「俺たちが5回やりたかったんやから」っていう。 北 同じ曲を6回やってるからややこしいけど、同じことをやり続けるのって苦痛じゃないですか。2日間のイベントで両日出演だったんですけど、「曲かぶりNGでお願いします」って言われたんですよ。「じゃあ同じ曲を1日何回もやるのはOKですか?」って聞いたら、「よくわかんないですけど、いいです」ってなったので。だから1日目は普通のセットリストやって、2日目は「荻窪」しかやらないっていう。 オサキ だから30分で聴けたの1曲だけってことですよね。それでいけるのはやっぱりすごいヤツやと。どこかでブレーキはかかるし、そんなの絵空事というか机上の空論やないですか。あれができるかできないかでわかれますよ。人間の仕組みというか。すごいあっぱれでした。そういう痛快なのをこっそりやってるのも僕は好きなんですけど、だからルサンチマンは大好きなんですよ。真剣だから面白い。