“分裂抗争10年目”の節目に発生【愛媛スタバ銃殺】 過去に撃たれた幹部が語る「喫茶店襲撃の恐怖」
愛媛県四国中央市のショッピングモール内の喫茶店・スターバックスコーヒーイオンタウン川之江店の店内で、職業不詳の石川雄一郎が射殺された事件は、白昼堂々、多くの一般客がいるなかでの犯行で、世間に大きな衝撃を与えた。犯人は指定暴力団池田組のナンバー2・前谷祐一郎若頭とされており、愛媛県警が殺人容疑で指名手配して行方を追っている。ただ、前谷は拳銃を所持したまま逃走しており、再び同様の事件が発生すれば一般市民の巻き添えも危惧され緊張感が高まっている。 【衝撃の内部写真】すごい…! 1月に行われた六代目山口組・高山清司若頭ら“極道トップ3”集結の「緊急頂上会議」の内幕 喫茶店は不特定多数の人々が利用する場所だが、意外にも暴力団による発砲事件は少なくない。最近でも東京都町田市の「ドトールコーヒーショップ町田ターミナル店」で’23年5月、六代目山口組系幹部が射殺され、稲川会系の元幹部が逮捕された。’97年8月には神戸市のホテル内の喫茶店で、五代目山口組当時の若頭・宅見勝が同じ山口組の中野会のヒットマンによって射殺され、付近にいた歯科医も銃撃の巻き添えで死亡した。 このほかにも、これまでに複数の事件が発生している。一般客がいる喫茶店で発砲するなど危険極まりないことだが、ある暴力団幹部は、「公衆の場だから、『ここで殺されることはないだろう』と油断する。やる方はほかに客がいようが関係ない」と言う。 さらに、首都圏で活動している指定暴力団の幹部は、「かつて自分もトラブルとなっていた、ほかの組織のヤクザに喫茶店で会談中に撃たれたが、奇跡的に助かった」と体験談を打ち明ける。 「ある組織のヤクザとカネをめぐるトラブルから、喫茶店で繰り返し話し合いを行っていた。ある日の会談中に向かい側の席に座っていた相手が突然、拳銃を取り出し、至近距離で自分に向けて発砲し胸を撃たれた。 小説などのモノの本には『焼いた火箸を突っ込まれたような痛み』などと書かれていることもあるが、実際に撃たれるとそのような感覚ではない。数十キロもある鉄の塊のような物体をドーンと胸に押し付けられるような強烈な重み、圧力がかかるような感覚で呼吸ができなかった。立ち上がったが、そのまま倒れた」 銃撃された幹部は、近くの病院に救急搬送され緊急の手術をうけることとなった。 「(銃撃後は)気を失っていたが、救急車で運ばれている途中に意識が戻ったこともあった。その後、再び意識がない状態になったが、手術を受けていた最中に再び意識が戻り、医者が『かなりまずいね』などと話している声が聞こえたことを記憶している。銃弾は体を貫通していた」 手術は無事、成功した。後に会話ができるようになってから、担当医が、「このように上半身を銃撃されて、内臓がかなり傷つけられたのに死なずに生きているのはまさに奇跡だ」と振り返っていたという。幹部は長期療養のうえ復帰することになった。 「拳銃を発砲すると(火薬が発火するため)弾が熱を帯びるのは確かなこと。火箸を(体に)突っ込まれる、または押し付けられるような熱さ、痛さは、弾が皮膚をかすった場合や手足に命中した場合などには感じるかもしれない。しかし、胸を撃たれるとこのような感覚はまったくない。痛みを感じるというよりは、圧迫感の方が強烈だった。(傷の)痛みは手術が終わったあたりで感じるようになった」 愛媛県四国中央市のスターバックスコーヒーで相手を射殺した前谷も、かつて銃撃されたことがあり奇跡的に命を取り留めた経験があった。’20年5月、岡山市の池田組本部事務所近くで、腹部を銃撃されて重傷を負った。発砲したのは六代目山口組系の組員だった。前谷はこの際には報復することはなく沈黙を保っていた。 一方、殺害された石川はかつて池田組に所属していて、約1年前に六代目山口組に移籍していたことが警察当局によって確認されている。六代目山口組が’15年8月に分裂し、離脱した神戸山口組との間で起きている対立抗争状態は、今年で10年目を迎える。池田組は神戸山口組の結成時からの有力組織だったが、対立抗争状態のさなかの’20年7月に離脱を宣言。岡山県公安委員会は’21年11月になり、独立した組織として指定暴力団に指定した経緯があった。 ’22年10月には池田組・池田孝志組長が岡山市内で散髪中に六代目山口組系幹部に襲われたこともあり、両陣営は対立抗争状態にあるとされる。そういった背景があるのか、動機は個人的な怨恨なのかどうかは不明だが、愛媛県ではこれまで暴力団による大規模な対立抗争などの発生はなかった。さらに一般市民のくつろぎの場である喫茶店で事件が発生したことから、地域住民に不安が広がっている。(文中敬称略) 取材・文:尾島正洋
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