松下洸平の無表情からすべてが伝わる…8話かけてじっくり描いた”牧野”の成長とは?『放課後カルテ』第9話考察レビュー
松下洸平主演のドラマ『放課後カルテ』(日本テレビ系)が放送中。本作は、小学校に赴任した口も態度も悪い小児科医が、類稀なる観察眼で児童の異変に気付き、未来へ向かう子どもたちの背中を押す保険室ヒューマンドラマ。今回は第9話のレビューをお届けする。(文·まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】松下洸平の表情の芝居が上手すぎる…貴重な未公開カットはこちら。ドラマ『放課後カルテ』劇中カット一覧
患者のために”嘘”をつく牧野(松下洸平)
残すは最終話のみとなった『放課後カルテ』(日本テレビ系)。14日の第9話をもって牧野(松下洸平)の成長物語は区切りを迎えた。 そもそも医師として小学校の保険医となった牧野は“変わらないこと”がひとつの魅力だったように思う。患者が子供であろうと大人だろうと目線は変わらず、真摯に向き合って事実を伝える。 口は悪いし、ぶっきらぼうだが、「助けたい」というまっすぐな思いがきちんと伝わってくるからこそ私たちは牧野から温かさを感じ、作中の児童も信頼を寄せてきた。 実際に牧野が「優しさ」を意識しているかはわからない中、9話を迎えていたが、心疾患を抱える直明(土屋陽翔)への言葉から確かな成長を感じ取ることができる。弟の手術に不安を隠せない啓(岡本望来)に対して「医療に絶対はない」と漏らした牧野。 しかし、直接顔を合わせた際、手術に不安を抱える直明に「お前は治る。直明は治る」と“絶対”という言葉を使いながら背中を押したのだった。 言った直後から後悔の表情を浮かべていた牧野。医療の世界に「絶対」はないわけだし、これまで常に真実を伝えてきた牧野が結果的に“嘘”を言ったことになる。しかし牧野の姿を見て責める者はきっとどこにもいないはず。 自身の信念を曲げてでも、直明が求める言葉を口に出した牧野は子供にどう寄り添うべきかをここまでの8話で学ぶことができたようだ。
相反する対応から見てとれる牧野の成長
牧野にかけられた言葉や、元気になったらキャッチボールをすると約束をした直明手術を受けることを決心。直明の手術は無事に成功し、牧野が病室を訪ねると、またも直明から医師にとって難しい問いかけがなされる。 「僕の心臓良くなるよね?」。すると、牧野は聴診器を取り出し、心臓の音を直明に聞かせる。「もう少しの辛抱だ。焦らずしっかり治せ」という言葉に嘘はないが、思いやりには溢れている。 直明に対しての2つの異なる対応は牧野の成長を如実に物語っていたのではないだろうか。ここまで牧野のひとつひとつの言葉や動きをつぶさに観察したくなるのも、松下が心中を表現するかのような芝居を見せ続けているから。 前述の、直明が「絶対?」と聞き返した時には、一瞬の間をもって返答しているが、医師として答えるべきかの葛藤を抱えていたのだと想像するのは容易だった。 「キャッチボールできる?」という約束に対しても目を泳がせながら「練習しとく」と答える姿は、牧野というキャラクターの芯をぶらさずにいながら可愛げも感じさせてくれる。