レアル・マドリードを新境地に導いたベリンガム 表舞台と裏方を同時に行なえる逸材
【ベリンガムを中心に新境地の戦い】 22番のタイプが3人いる現在のレアル・マドリードは、その筆頭であるベリンガムを中心に新境地を拓いた。新境地というより、攻めても守っても強いオールマイティ体質をさらに加速させた。接戦の連続となるCL後半戦を制するための最適解である。 4番のように守り、8番のように走り、10番としてのアシストとゴール。いずれもハイレベル、さらに無類の勝負強さ。ベリンガムは、ディ・ステファノの正統後継者なのだ。本家がレアル・マドリードに来たのは当時キャリアの終盤とされた27歳、ベリンガムはまだ20歳。CL優勝は序章にすぎない。イングランド代表での活躍もこれから。ディ・ステファノには無縁だったワールドカップの舞台も待っている。 全部持っている選手としては、1980~90年代に活躍したルート・フリット(オランダ)がいたが、フリットはすべてを任されておらず、その都度与えられた異なるポジションの範疇でプレーした。ベリンガムはすべてを委ねられている。キリアン・エムバペが加入する来季、レアル・マドリードはまた違った顔を見せるだろうが、ベリンガムの重要性は変わらないだろう。
西部謙司●文 text by Nishibe Kenji