高橋努、『虎に翼』で体現した“記者魂” 寅子の人生の節目ごとに側にいた竹中の生き様
“自身の目で見たことを記事にする”竹中(高橋努)の姿勢
竹中の魅力は、“初の女性弁護士誕生”という歴史的瞬間について切り取っているというよりは、きちんとその先にいる顔も名前もある一人ひとりの奮闘を記者として追っているところだと思える。最高裁判所家庭局で奮闘する寅子を密着取材していた時も、やけに彼女を神格化したり特別視するわけではない切り口に、寅子自身も安心感や居心地の良さを覚えるところもあったのではないだろうか。耳障りの良い言葉で済ませてしまわない竹中の率直な問いかけや取材記事に寅子も気付かされることがあり、そんな彼からの忌憚のない記事に労われたり認められたりした部分もあっただろう。 コワモテで基本的に言葉足らず、口を開けば憎まれ口も叩きながらも、愛情深さや物事の真理を突く鋭い観察眼が滲む竹中役を演じる高橋は、意外にも本作が朝ドラ初出演というから驚きだ。新聞記者をしていた頃からどこか一匹狼な様子も窺えて、何にも忖度せずに自身の目で見たことを何にも縛られずに記事にするスタイルには記者としての矜持も光る。そういえば、『ちむどんどん』(NHK総合)に登場する同じく新聞記者・田良島(山中崇)を彷彿させる。ちょっぴりひねくれている一筋縄ではいかない記者の生き様を2人は魅力的に見せてくれている。 さて、ずっと寅子を見守ってきた竹中はどんな視点で、どんな言葉で「原爆裁判」における彼女の闘い方を見届けようとするのだろうか。
佳香(かこ)