美容医療大国・韓国で起き始めた専門医制度の崩壊、日本も対岸の火事では済まない
■ 全貌が見えにくい韓国の研修医スト問題の本質 ・韓国では、国民1000人当たりの医師数が2.6人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均3.7人を下回っている。そのため医師増員が必要とされている。 ・政府は2035年の1万5000人近い医師不足に備えて、年間の医学部入学定員を従来の約3000人から約5000人に引き上げる。 ・韓国の研修医は週の労働時間制限が88時間で、過酷な労働環境を強いられている。 ・韓国の地方では医師不足が問題になっている。 ・特に小児科、産科、救急などの社会にとって必須な分野の医師が不足している。 ・韓国の医師の平均収入は約3000万円だが、小児科など診療科によっては低賃金で格差がある。研修医は低賃金に抑えられている。 研修医の過酷な労働環境や医師の偏在、増員計画、特権意識などの関係が指摘されている。 これらを見ると韓国の政府が医師を増やそうとしている背景が分かるが、研修医がストライキを起こすほどの重大な問題であるかは、一見して明らかではない。 例えば、医師を増員すると医師間の競争が激化し、結果として医師1人当たりの収入が減少するとされている。確かにそうかもしれないが、韓国の医師収入が高水準である中で、直ちに収入減少が不満の原因になるかは疑問も沸く。 また、研修医の低賃金も、確かに労働は過酷と見えるが、修行期間中であればやむを得ないと見えなくもない。 どうも全貌が把握しづらい。 冒頭でも述べたが、結局、医師の労働状況や金銭問題も重要ではあるが、専門資格の根幹が揺らいでいること、その背景に美容医療という大波が存在していることが、韓国の医療危機を招いたと考えている。 これ自体が原因でなかったとしても、少なくとも、その点を含めて考えると、研修医が反乱を起こしている背景は理解しやすくなると考えている。 【関連記事】 ◎【韓国医師・大量辞職騒動の本質】悪者扱いされている医師たちが「集団辞職」を訴えるほど深刻な韓国社会のひずみ(JBpress)