「うつ病で休職」回復に効果的な“心の休ませ方”、働けないことへの劣等感や罪悪感を遠ざける
なぜ、食事やスポーツで心の病が治るのか、と思うかもしれませんが、スタッフや仲間と遊んでいる間は仕事のことを忘れられます。そこには、否定的なことを言う人はいません。レクリエーションで楽しく前向きな気持ちになり、人と人との触れ合いを通して自信を取り戻し、他者への恐怖心も払拭できるようになります。 専門のスタッフが立ち合いますので、その場が肯定的体験の場になるよう、常時ケアをしています。Aさんにとっても、その効果は大きかったようでした。
デイケアに参加するようになったAさんは、対人恐怖が消失し、このことが復職への不安を払拭することになりました。 デイケアでの体験を通して、人生を楽しむことの大切さ、仲間を信頼することの必要性、休憩を取るコツなどを身につけることができたのです。 Aさんが復職して10年が経過しました。ときどき、軽いうつ状態になることはあるようですが、働きながら回復できているといいます。 いまでは、心の病の経験が部下や同僚への思いやりを深め、みんなの信頼を得ているといいます。
完璧症で心配事に囚われるとなかなか脱出できなかったAさんですが、ネガティブなものの考え方をポジティブに変えることができるようになったのです。 Aさんのいまの座右の銘は、「人生は遊ばなくては損」。 また、スマホには「オーバーワークにならない。疲労回復をしっかりする。完璧主義にならない。相手の良いところを見る。嫌なら放置や遠ざけていい。家族を大切にする」というメモがあり、ときどき確認しているといいます。 そのメモは私がAさんに話した言葉です。
■うつ病は、不条理な社会を懸命に生きてきた「証」 うつ病を発症したとしても、Aさんのように仕事に復帰される方はたくさんいます。 ただし、症状が完全に出なくなるまでにはしばらくかかるため、Aさんのように、ときどき軽いうつ状態になるのは珍しいことではありません。ある意味、ストレスのある社会に戻ったということです。 軽いうつとは、元気がなくなったり、疲れやすくなったり、朝起きづらくなったりなど、うつ病の部分的な症状が出る状態です。周りから「ちょっと元気ないね」と言われることもありますが、早い段階で心と体を休ませると回復します。