「うつ病で休職」回復に効果的な“心の休ませ方”、働けないことへの劣等感や罪悪感を遠ざける
いまは、劣等心や微小心の種が生まれやすい時代です。というのは、昔に比べると便利で豊かな時代になり、それが基準になってしまったからです。そして、比較の対象となる情報が、世の中にはあふれているからです。 いろいろなものが簡単に手に入ることでありがたみを感じることが少なくなっているうえに、スマホを見たり、パソコンで検索したりすれば、まだ手に入れていないものや生き方などが、否が応でも目に飛び込んできます。周囲と比べると、どうしても自分の人生や存在が、平凡でつまらないものに見えてきます。人によっては、惨めさを感じることもあるでしょう。
さらに、会社でも、学校でも、もしかすると家までもが結果主義で、どれだけがんばっても結果が悪ければ、評価されないことがあります。その評価で「あなたはダメ」「あの人のほうがあなたより優れている」などと言われれば、「自分には価値がない」「自分はダメな人間」だと思ってしまうのも仕方がありません。 いつも誰かと比べたり、比べられたりしていると、多かれ少なかれ劣等感や微小感が生まれるのは当たり前なのです。 それでも、自己の中心が平常心にあることが多ければ流せるのですが、不安心にあることが多くなると気になり始めます。そして、自信を失ったり、焦りを感じるようになったり、落ち着きがなくなったり、心に負担がかかるようになり、それが脳の負担にもなっていくのです。
■映画やスポーツで心の病が快方に向かう うつ病を発症した場合は休職が最善策です。Aさんがそうだったように、私も休職を勧めています。ここで多くの患者さんに見受けられるのが、働いていないことに対する劣等感や罪悪感です。ゆっくり休まなければいけないのに、復職や転職のことばかり考えていては、うつ病からの回復の妨げになります。 そこで、私のクリニックで勧めているのがデイケアへの参加です。デイケア(当院の場合は、午前から夜まで行っているので正確には「デイナイトケア」。一般的にデイケアは昼間だけです)とは、スタッフや参加した人たちと一緒に食事をしたり、スポーツをしたり、映画を観たり、カラオケをしたりなど、楽しい時間を過ごすことで肯定的体験を重ねる場所です。